▲top
農業求人情報サイト

vol.2朝霧メイプルファーム有限会社

合言葉はD・I・Y(Do It Yourself)!!常に挑戦を続ける朝霧メイプルファームに潜入!!

  • 朝霧メイプルファーム有限会社
  • 事業概要
    酪農業
  • 所在地
    静岡県富士宮市
  • 従業員数
    16名
  • 飼養頭数450頭超!成長中のメガファーム
  • 働きやすさを追求!若手・女性スタッフも活躍中!
  • 細菌の培養検査や免疫抗体の測定も行うアカデミックな牧場

農業ジョブの運営スタッフが業務を体験し、現場をレポートする「農業密着24時!」。
今回は富士山のふもと、標高800mの朝霧高原で牧場を営む朝霧メイプルファーム有限会社(以後、朝霧メイプルファーム)からお送りします。
レポーターは鈴木。「牧場は初めて」という鈴木が、成長中のメガファームの魅力に迫ります!

今回お世話になる方
朝霧メイプルファーム有限会社
丸山 純 さん

朝霧メイプルファームの現場をまとめる若き就農者。牛が快適に過ごせる環境づくり、スタッフが働きやすい職場づくりに注力し、出荷量の増加やスタッフのスキルアップなど、牧場全体の能力UPを実現。 各地でのセミナー講演実績も。

レポーター
農業ジョブ 運営スタッフ
鈴木 鵬也

2014年3月東京農業大学卒業。
新卒で株式会社LifeLabに入社。
「農業の現場を見ないとはじまらない!」とレポーターに立候補。 体力はあると豪語しているが、その自信の程やいかに。

1日目

梅雨の合間の2014年6月某日、農業ジョブ取材班は富士山を横目に見ながら朝霧高原を目指します。
お昼過ぎに牧場に到着すると、今回お世話になる朝霧メイプルファームの丸山さんが出迎えてくれました。
まずは牧場全体を見学しながら、朝霧メイプルファームの施設や取り組みについて紹介していただきます。

鈴木です。本日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、朝霧メイプルファームさんの特徴をズバリ教えていただけますか?
朝霧メイプルファームの丸山です。こちらこそ、よろしくお願いします。
当社の特徴は「牛が過ごしやすい環境」「スタッフが働きやすい環境」を意識しているところですね。牧場経営では牛乳を安定して出荷することが重要なのですが、どちらが欠けても安定出荷はできませんし、牧場として成長も望めないと考えています。 また、当社のスタッフはほとんどが20代なのですが、DIY(Do It Yourself)を合言葉に、自分たちでできることは何でも挑戦するようにしています。業務量は多くなるかもしれませんが、スタッフの成長スピードはかなり早いと思いますよ。

丸山さんにご挨拶。よろしくお願いします。

恐る恐る「ユキちゃん」と交流する鈴木。

万歩計で健康状態をチェックします。

通常、牛は約1年のサイクルで、仔牛を産む分娩、搾乳(いわゆる乳搾り)を行う泌乳期、次の分娩に向けて体を休ませる乾乳期を繰り返します。
朝霧メイプルファームではメインの牛舎で乾乳牛と泌乳牛を管理し、分娩直後の「フレッシュカウ」と呼ばれる牛を別の牛舎で管理しているそうです。
牛舎内を歩いていると、早速「ユキちゃん」と呼ばれる、真っ白な毛並みの泌乳牛が出迎えてくれました。
恐る恐るユキちゃんに近づく鈴木は、耳元に黄色いタグがつけられているのを発見しました。

牛の耳元についている黄色いタグにはどんな意味があるのですか?
耳についているタグは牛を識別するタグですね。
番号が2種類書かれていると思うのですが、片方は当社内での識別番号、もう一方は全国の牛に振られている識別番号になります。
トレーサビリティ制度といって、生まれた牧場、育てられた牧場、品種などが番号で識別できるようになっています。

それから、牛の足元に緑色のバンドが装着されているのが見えますか?
これは万歩計なのですが、当社では万歩計を使って、牛の発情のタイミングを見極めています。
牛の発情周期は約21日周期で、発情時には行動量(歩数)が増加します。発情したタイミングで人工授精を行うのですが、1度チャンスを逃すと次の発情まで何もできません。受胎率の向上は生産性の向上にも繋がるので、普段から歩数データは注視しています。

万歩計で測定している歩数データは事務室のPCに転送され、牛ごとの毎日の歩数がグラフで可視化されるそうです。牛の発情期を見逃さないよう、歩数の変化はスタッフ同士で情報共有しているそうです。

また、牛舎内を歩いていて感じたのは「意外とニオイが気にならない」こと。
朝霧メイプルファームでは牛舎の掃除を1日に3回行い、扇風機で換気・室温調整を行うことで「牛が過ごしやすい環境」を実現しているそうです。

メインの牛舎を案内していただいた後は、朝霧メイプルファームの特徴の一つでもある、独自飼料について解説していただきました。

おからベースの配合飼料を発酵させます。

右側のかくはん機で飼料を混ぜ合わせます。

「フレッシュカウ」の牛舎です。

ここに並んでいる袋には何が詰められているのですか?
これは業者から譲り受けたおからをベースにした配合飼料です。数ヶ月間、日光の下で発酵させています。
当社は70haの牧草地も所有しているのですが、自社生産の牧草と、発酵させた配合飼料やトウモロコシ等を混ぜ合わせて乳牛用の餌を作っています。輸入の乾燥牧草も使用しているのですが、価格相場が変動しやすいので、自給飼料の導入はコスト面で大きな強みになります。

飼料について一通り解説していただいた後は、フレッシュカウを管理する牛舎へ。
フレッシュカウは健康管理には特に気を配らないといけないそうですが、ユキちゃんの写真と見比べると、柵の構造が微妙に異なります。
これは「牛がエサを食べているかどうか」を観察するためで、食欲は牛の健康状態を見極める大事なバロメーターなのだそうです。
フレッシュカウの管理牛舎では給餌時に柵を一時的に固定し、エサを食べている牛と食べていない牛を一頭一頭チェックするそうです。

エサを食べていない牛にはどのような対応をするのですか?
食欲がない牛は、何かしら疾病、問題があることが多いです。その問題を特定するために体温測定や血液検査、細菌の培養まで、スタッフが現場でできる検査は極力行うようにしています。高度な治療は獣医さんにお願いしますが、自分達で出来るだけ治療を行うことで、スタッフのスキルアップに繋がりますし、何より牛に対する観察力も身に付くのではないかと思います。
明日は鈴木さんにも、フレッシュカウのチェックをお願いしようかと思います。
当社の経営にも関わる大事な作業ですので、体験と言えど、ミスは許されませんよ(笑)

社長にご挨拶。お揃いのツナギです。

搾乳施設。48頭の同時搾乳が可能です。

マニュアルをもとに、手順を覚えます。

牛舎を一通り案内していただいた後は、早速業務体験に。牧場の業務の核となる「搾乳」に挑戦です。
朝霧メイプルファームでは搾乳を1日3回(5時~、13時~、20時~)行っているそうで、泌乳期の牛を牛舎から搾乳施設に誘い込み、一度に48頭の搾乳を行います。

取材班が見学を行っている間に泌乳牛が搾乳施設の入口に移動しており、搾乳開始と共に次々と施設に進んでいきます。
鈴木も搾乳用のエプロンと手袋を装備し、丸山さんからレクチャーを受けます。

本日は1日目なので、練習だと思ってください。
搾乳作業は乳頭の消毒、前搾り、乳頭の洗浄、搾乳、乳頭の消毒の5段階ですが、このうち「前搾り」はテクニックが必要になります。
前搾りは乳頭に残った細菌の多い牛乳を排除するだけでなく、乳頭刺激によって「オキシトシン」という牛乳の分泌を促進するホルモンの放出を促します。逆に、前搾りが下手だと牛にストレスがかかり、嫌われて手を蹴られるので注意してくださいね(笑)
蹴られないように頑張ります(笑)
入社したスタッフさんはどれくらいで搾乳に慣れるのですか?
個人差はありますが、基本的には1週間で基本的な動作はこなせるようになってもらいます。
スタッフには6頭同時に搾乳してもらっていますが、鈴木さんは初めてなので、まずは1頭に集中しましょう。
では、早速挑戦してみましょうか。

丸山さんの前搾り。見事に搾れています。

乳頭洗浄でも牛はリラックスするそうです。

鈴木の前搾り。やっと滴る程度です。

隣で見ている分には簡単そうに見える前搾りも、いざ挑戦すると全く搾れず。。牛も嫌がっているのか、足をばたつかせて鈴木の手を蹴飛ばします。
持ち方を変え、力加減を変え、何度も挑戦しますが、なかなか牛乳は出てきません。
見かねた丸山さんから、アドバイスが入ります。

やはり、いきなりは難しいですよね(笑)。握り方にもコツがあるのですが、前搾りは力を込めればよいものではありません。
強いて言えば、、牛に気持ち良くなってもらうことが重要なポイントですかね(笑)。
とにかく搾乳中はリラックスしてもらうことが大事です。

丸山さんのアドバイスを受けると、、

2本指でも簡単に搾れるように!

ミルカーを装着して搾乳を行います。

当初は5本指で思いきり乳頭を握りしめていた鈴木ですが、丸山さんのアドバイスで見違えるようにフォーム(?)が変わりました。
前搾りが上手くなるにつれて、搾乳作業全体がスムーズに進むように。足をばたつかせる牛に驚きながらも、鈴木の挑戦は続きます。

後半は少しだけ慣れてきましたが、やはり前搾りが難しいですね。。
同じような握り方・力加減でも、牛によっては全く搾れませんでした。
もう少し牛の気持ちになって接しないといけませんね。
当社のスタッフも、入社直後はなかなか上手くいかないので安心してください。
明日の早朝の搾乳では、複数の牛の同時搾乳に挑戦してもらおうと思います。
前搾りは上手くできた時のイメージが大事なので、その感触を忘れないでくださいね。

搾乳体験をさせてもらった後は、仔牛の哺乳にも挑戦します。
産まれたばかりの仔牛は専用の牛舎で育てられており、朝霧メイプルファームでは、女性スタッフの佐藤さんが哺乳を担当しています。
佐藤さんからレクチャーを受けて鈴木も哺乳に挑戦。
なかなか懐いてくれず、少々乱暴な押さえ方でなんとか哺乳に成功しました。仔牛の表情がかわいいですね。

こちらが仔牛の哺乳舎です。

哺乳担当の佐藤さんのお手本。

鈴木も挑戦。少々乱暴な押さえ方です。。

仔牛に飲ませているミルクは、母牛のミルクなのですか?
そうですね。産まれたての仔牛には母牛のミルクを与えるようにしています。カルシウムやタンパク質、ビタミンなどの栄養素も豊富というのもありますが、仔牛に母牛のミルクを与える最大の目的は「免疫力」をつけさせることです。一定期間はしっかりと母牛のミルクを哺乳し、成長したら自動で人工乳を与える装置がある牛舎に移します。

さて、まだ16時すぎですが1日目の体験はこれで終了になります。牛と触れ合ってみて、いかがでしたか?
最初に牛舎に入った時は数100頭の牛に囲まれて少し怖かったですね(笑)
搾乳、哺乳という作業を体験させていただいて、丸山さんがおっしゃる「牛にリラックスしてもらうこと」の重要性を感じました。
明日の搾乳は手を蹴られないように頑張ります!

悪戦苦闘している場面も多々ありましたが、なんとか牧場の雰囲気には慣れた様子の鈴木。 この日は丸山さんに牧場周辺も案内していただき、夜は特製のカレーをご馳走になりました。 そして、業務体験は2日目を迎えます。

2日目
おはようございます。牧場の朝は早いのですね。。
本日もよろしくお願いします。
おはようございます。牛のスケジュールに合わせないといけないので、牧場の朝は早いですね。慣れると以外と楽なものですよ(笑)
今日は曇っていますが、晴れた日に見える富士山は感動モノですね。朝霧高原の名物なのですが、お見せできないのが残念です。

さて、今日は牛舎の掃除から始めましょう。

起床時間は朝4時。鈴木は朝が苦手です。

搾乳のために牛を移動させて、、

牛舎の掃除を行います。

牛舎の掃除は搾乳を行うタイミングで一気に行うそうです。
牛が休むベッドを1区画ずつ掃除し、牛糞が溜まっている通路も、専用の重機で一気に掃除を行います。

牛糞などで汚れていた通路も、、

重機で一気にピカピカに!

新しいおがくずを撒いて、完了です!

牛舎掃除のお手伝いをした後は、前日に引き続き、搾乳に挑戦です。
丸山さんからは複数頭の同時搾乳を課せられている鈴木。果たして手際よく作業をこなせるのでしょうか?

今日は予告どおり、複数頭の搾乳にチャレンジしていただきます。
昨日の後半の感覚をイメージしてもらえれば、焦らなくても対応できると思いますよ。

どこか余裕が感じられる2日目の鈴木。

3頭同時の搾乳にも挑戦です。

周りを見渡す余裕も出てきました。

既に一度体験しているからか、どこか余裕を感じさせる鈴木。
前日学んだコツは活かせるのか、、と撮影スタッフも不安に感じていましたが、いざ搾乳が始まると慣れた手つきで作業を進められていました。
丸山さんからは「10年に1度の逸材」と、ありがたい(?)評価もいただき、終盤は3頭同時の搾乳も任せていただきました。
終盤は周りを見渡して、器具の整理整頓などの心配りをする余裕も出てきた鈴木。丸山さんからはお褒めの言葉をいただきました。

鈴木さん、すっかり牧場スタッフみたいな働きぶりですね。3頭お任せしてもしっかり搾乳できています。
2日目でこれだけ手際がよくなる方もなかなかいないと思いますよ。
来月からウチで働きませんか(笑)?

思わぬタイミングでヘッドハンティングを受けてしまいましたが、丸山さんからは合格点をいただけたようです。
朝の搾乳後はフレッシュカウの健康チェックに移ります。

フレッシュカウの健康管理は当社でも力を入れている業務です。
昨日もお伝えしましたが、体温測定、血液検査など、スタッフができることは基本的にすべて社内で行います。
牧場で働くからには、牛の様子をしっかり観察することがスキルアップの近道だと考えています。

スタッフの皆さんが毎日記録している健康チェック表を受け取り、早速フレッシュカウの食欲を確認します。 柵から顔を出していない牛と、柵の中で「反すう」をしている牛をチェックし、食欲不振と判断された牛は体温を測定します。 体温測定の他にも血液検査、培養検査もスタッフで行うとのことで、病理の特定を早めることで、牧場全体の生産性の向上にも繋げているそうです。

1頭1頭、様子を確認します。

恐る恐る、体温測定に挑戦です。

血液検査も体験させていただきました。

フレッシュカウの健康管理を一通り終えた後は、全スタッフ参加のミーティングにも参加させていただきました。
この日は上半期の受胎率のデータを分析。専属の獣医さんも参加し受胎率の変動について議論します。
スタッフ1人1人が普段から観察している点や、気になったことを報告し合い、密に情報共有しているところも特徴的でした。

全員参加で活発な議論が交わされます。

2日間、ありがとうございました。

農業ジョブから就職した2人と撮影。現在では6人の方が農業ジョブ経由で入社したそうです。

ミーティングが終わる頃、1日目に到着してからちょうど24時間が経過しました。
何もかもがはじめての体験だった朝霧メイプルファームさんでの業務体験。最後は鈴木の感想と丸山さんのコメントで締めたいと思います。

丸山さんをはじめ、朝霧メイプルファームのスタッフの皆さんは向上心が高く、「牧場を成長させる」という意識を持って日々の業務に取り組んでいらっしゃることを実感しました。
また、業務をマニュアルに落とし込んだり、情報を共有する仕組みがきちんと機能しているため、はじめて業務に参加させていただいた私でも、1つ1つの作業の必要性をすんなり理解することができました。そして何より、業務体験を通じて牛に対して愛着が湧いてきました(笑)。
貴重な体験を通じて、「酪農」という仕事に対する理解が深まったように思います。
2日間、お疲れさまでした。
牧場のメイン業務となる搾乳以外にも、仔牛の哺乳やフレッシュカウの健康管理など、牛の様子を直接見る機会をご提供したうえで、「牛への愛着が湧いてきた」というコメントをいただけたのは大変ありがたいですね。
当社のスタッフは20代がほとんどで、若いチカラでこれからも成長していきたいと思います。スタッフの働きやすさも更に向上させたいと思っています。
また朝霧高原に来た際は、是非ウチの牧場にも寄ってくださいね。

こうして2日間の業務体験も無事終了。朝霧メイプルファームの皆さん、どうもありがとうございました!

この記事をシェアする