vol.3井出トマト農園



トマト一筋80年!!お客様目線の経営で驚異の成長を続ける都市型農業の現場に潜入!!



- 井出トマト農園
- 事業概要
施設野菜 - 所在地
神奈川県藤沢市 - 従業員数
30名
- 農林水産大臣賞(2013年)など、受賞歴多数!
- 先進技術の導入や加工品販売も積極的に行う、成長企業です!
- TV出演、CM出演実績も多数!メディアからの注目度も高い農園!
農業ジョブの運営スタッフが業務を体験し、現場をレポートする「農業密着24時!」。
今回は東京から車で1時間弱、神奈川県藤沢市にある株式会社井出トマト農園さんに密着します。
2014年1月に法人化し、テレビなどのメディアでも数多く取り上げられている井出トマト農園さん。驚異の成長を続ける秘訣に迫ります!!
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株式会社井出トマト農園
井出 寿利 さん
先代から事業を継承後、時代に即した新戦略を次々と実践。わずか8年間で年商1億円を突破させ、更なる事業拡大を目指して自慢のトマトに日々愛情を注ぐ。
2013年7月には「第62回全国農業コンクール」にて「名誉賞」「農林水産大臣賞」を受賞。最新技術の導入や海外視察も積極的に行っており、業界内でも注目を集めている若手農業経営者。
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農業ジョブ 運営スタッフ
渡邉
農業高校卒業後に上京し、東京農業大学に入学した農業女子。株式会社Life Labに入社後は農業ジョブの運営業務に携わる。学生時代は農業実習の授業が大好きで、今回の密着取材のレポーターに立候補。
趣味は美味しいご飯を食べ、美味しいお酒を飲むこと。
残暑も厳しい2014年9月某日、取材班は早朝から神奈川県藤沢市へ。
井出トマト農園さんに到着してまず目に着いたのは何棟も立ち並ぶ立派なハウス。
その向い側には直売所兼事務所があり、さっそくご挨拶へ。
それにしても皆さん朝早いのですね。普段だったら私はまだ寝ている時間です・・・。


































































この仕事をする上で早起きは基本中の基本ですからね。僕は毎朝6時に起きて、7時にはひと仕事終えていますよ。
渡邉さんはまだまだ眠そうですね・・・。よかったら眠気覚ましに、うちの農園のトマトで作った自慢のトマトジュースを飲んでみませんか?すごく美味しくて、元気が出てきますよ。



代表の井出寿利さん。生産から販売までマネジメントを行う敏腕経営者です。



これが井出トマト農園のトマトジュース。鮮やかな赤色が食欲をそそります。



さっそくいただきます。
すごくおいしいです!こんなトマトジュース初めて飲みました!
ありきたりな表現かもしれませんが「ジュースなのにトマトを食べているような感じ」がしますね!
衝撃です、、美味しくて目も覚めました!


































































農園では試験栽培を行っている品種も含めると13品種のトマトを栽培しているのですが、味の違いを楽しんでもらえるように品種ごとにトマトジュースやトマトケチャップを作っているんです。リピーターの方も結構多いんですよ。
他にはトマトジャムやカレールーなども作っています。これはオススメレシピなんですが、牛乳にトマトジャムを入れると美味しいんです。よかったら是非試してみてください。
(取材後記:トマトジャム入り牛乳は後ほど美味しくいただきました!)
これらはやはり、今注目されている「6次産業化」を意識されたのですか?


































































って聞かれたからなんです。その時にちゃんと答えられなくて「だったら自分で作ってみよう!」って思ったんです。
だから6次産業化を意識していたわけではないんですよ。お客様の声に応えていったら、現在のようなラインナップになったんです。



こちらはトマトケチャップ。使っている品種によって風味の違いが楽しめます。



お客様に商品を楽しんでもらえるようにオリジナルレシピを配布しているそうです。



ケチャップもしっかりいただく渡邉。うま味がギュッと詰まっています!
お話を聞くと、先代から事業を継承した際に「どうしたらお客さまに手にとって、喜んでもらえるか」ということをとことん考え抜いたそうです。 そして「高品質のトマトを作ること」「お客さまの声を聞いて販売戦略に活かすこと」の2軸で事業計画を立てることで、組織の成長につながったそうです。
現在では口コミでトマトやオリジナル商品の評判が広がり、レストランのシェフからの指名買いや、遠方から直売所に来てくださるお客さままでいらっしゃるとのこと。



こちらが井出トマト農園さんの直売所です。取材中も次々とお客さまが来店していました!



トマトコーナーの一部。色とりどりのトマトが並びます。



こちらは加工品のコーナー。どれも絶品でした!
事務所でお話を聞いたあとは、パートさんの朝礼にも参加し、いよいよ作業開始です!
まずはハウスにお邪魔して、収穫のお手伝いをさせてもらうことになりました。



いざハウスに潜入です!



広い・・・先がぜんぜん見えません。



着いて早々、パソコンをチェックする井出さん


































































全部で7棟あるハウスは3000坪ほどありまして、年間でおよそ200トンのトマトを収穫しています。
収穫作業の前に、ちょっとハウスのデータを確認させてくださいね。


































































とはいえ、作業によっては勘や経験が必要な部分もありまして。そうだ、作業の前にちょっとうちのトマトを食べてみてください。



































こちらは「ピッコラカナリア」という品種。オレンジ色が鮮やかです



早速いただきます!ピッコラカナリアは糖度が高く、濃厚な味!



紫色の「トスカーナバイオレッド」どんな味がするのでしょうか。



鮮やかな黄色の「イエローアイコ」フルーティな甘さが口中に広がります。



品種ごとの味の違いや特長をわかりやすく解説していただきました!



全品種を食べてご満悦の渡邉。今日は取材ですよ。。。。(撮影スタッフ談)
品種ごとに酸味や甘みが異なって、別の品種も食べてみたくなりますね!


































































沢山食べていただきましたが、実は初めて収穫の作業をしてもらう人には、それぞれのトマトを味わってもらっているんです。そうすれば「この位色づいたトマトが美味しい」って実感できますよね。
口で説明するより、まずは味わってもらった方が収穫のタイミングも把握してもらいやすいんです。
でも井出さんの言うとおり、それぞれのトマトを収穫するタイミングが掴めたような気がします!
































ひとしきりトマトをいただいた後は、いよいよ収穫作業へ。井出さんのお手本を見ながら、渡邉も挑戦です。



まずは井出さんのお手本から、ヘタの少し上の部分からトマトをもぎます。



余分な茎をハサミで切り落とします。



次々と収穫していきます。


































うちの大事な商品になるトマトなので、慎重にお願いしますね。



緊張して手が震える渡邉。井出さんも心配そうに見守ります。



やっとできました!1分もかかってしまいました・・・



「トマトの収穫なんて久々で~」と言い訳をする渡邉。


































































美しい見ためを保ったまま収穫することも重要なのですが、スタッフには収穫時間を意識して作業してもらいたいので、 一人一人にストップウォッチを配ってるんです。スタッフ自身で収穫にどのくらい時間がかかっているか把握してもらってます。
ストップウォッチを渡している理由は、競争をさせているわけでも、制限時間を決めているわけでもないとのこと。
収穫を担当するスタッフ一人ひとりに作業時間を意識してもらうだけでも、個人の意識が高まり、作業スピードが上がるそうです。
小さな工夫が事業の成長には欠かせない、とのことでした。



次はさきほど食べたイエローアイコの収穫。黄色くて少し細長い形が特徴です



井出さんのお手本を参考に、ミニトマトの収穫もお手伝いさせていただきます。



鮮やかな黄色が食欲をそそります!


































・・・あ、実だけ取れてしまいました・・・、すみません・・・・。


































































こういう細かい作業は手先が器用な人だとすぐに習熟しちゃうんですよね。
その後も井出さんにアドバイスを頂きながら何とか収穫を終了。
単純で簡単かと思いきや、見ため以上に難しい作業でした。渡邉もコツをつかみはじめたのは収穫作業の終了間際でした。
今は収穫量が少ない季節なので早めに終わりましたが、シーズン中は朝から日が暮れるまでひたすら収穫作業を行う事もあるそうです。
そういえば、ハウスに入ったときから気になっていたのですが、このトマトは背が高いですよね。高さは何メートルくらいあるのですか?


































































うちでは「ロックウール水耕栽培」という栽培方式でトマトを育てているんです。この茎が埋まっている部分に肥料(養液)が流れているんですね。企業秘密も多いのですが、例えば排液のデータを元に、肥料の濃度を変えたり、計画的に育てるために色々と工夫をしています。
やはり生産現場は勉強になることが沢山あります、、!



































高さ2.5m、茎の長さは8mあるトマトの木



ここに肥料が流れています



これが培地の役割をするロックウールです
収穫したトマトの重さを量り、収量のデータを記録してこの作業は完了です。
休憩を挟んで別のハウスに移動し、「芽かき」と「誘引」作業を行います。



収穫を終えたトマトを計量します。



休憩中のひとコマ。パートさん達とのおしゃべりに華が咲きます



井出さん手作りの直売所兼事務所。(DIYがご趣味とのことですが、趣味の範囲を超えています・・・すごい)





































主茎と葉柄の間に生えてるのが「わき芽」これを手で取っていきます。



黒い紐と井出さんの左手に持っている白いクリップで姿勢を整えます。



井出さんにコツを教えてもらいながら渡邉も挑戦します。


































































一通り作業を終えた一同。
最後にスタッフの方が作業を行った箇所を井出さんが一つ一つチェックしていきます。 こんなに広いハウスをチェックするのは大変ではないですか?との問いには「スタッフさん達の作業を疑っている訳ではないですが、改善案をアドバイスしてあげれば、そのスタッフさんの成長につながりますからね」との事。
従業員の方々に対して丁寧に指導する井出さんの様子は、今回の取材中に何度も見受けられました。



入念にチェックしていく井出さん



気になる所を発見。パートさんに声をかけます



丁寧に説明をしています


































































・・・でも誘引の際、紐を少しきつく巻きすぎですね。まきつける間隔もせまいです。想像してみてほしいのですが、 人間も腕にぐるぐると紐をまきつけられて、その上引っ張られたりしたら痛いですよね。
トマトも一緒なんです。まきつける間隔を広く、優しく絡ませるくらいがトマトにも負担がかからずちょうど良いのです。
スタッフさんも次回作業する際に意識して、コツも思い出しやすそうな説明ですよね。すごく分かりやすいです!


































































さて、午前中は施設の見回りをもう少ししましょうか。
芽かきと誘引を終えた一同は別のハウスへ。ハウスに入ると、屋根に見慣れない白い塗料がまぶしてありました。



ハウスの上には何やら白い塗料が・・・



肥料タンクのモニタでハウス内を流れる肥料のデータをチェックします。



給液の仕組みを解説していただきました!


































































生育段階では高温になりすぎてもトマトの生育に良くないですからね。僕が屋根に上って撒いたんですよ。
社員にもやらせたことがあるのですが、パイプの上を歩くのは慣れないと怖いらしくて。
さすがに体験してもらうのは危ないので、今日はやめておきましょう(笑)
それにしても、ここのハウスの苗はちょっと元気がないみたいですね。。。肥料のデータを確認させてください。


































































そうすると「どの程度トマトが栄養を吸収したか」わかりますよね。これも生育の度合いとデータを見比べて、微調整するようにしています。


































































土で栽培する土耕栽培でもデータ管理はできるとは思うのですが、簡便でなく、難しい気がします。
井出トマト農園でも様々な栽培方法を実践しながら現在の「ロックウール水耕栽培」にたどり着いたのですが、現代農業の一つの形かな、と思っています。もうひとつ、現代っぽい施設として「苗テラス」もご紹介しますね。
井出トマト農園では安定した生産を行うために苗づくりにも取り組んでいるそうで、「苗テラス」という育苗システムを紹介してくださいました。育苗からトマトの生産までの仕組みを自社でコントロールすることで、安定した経営基盤を作り上げることができるそうです。



ハウスの奥には見慣れない倉庫のようなものが。。



こちらが噂の苗テラスだそうです。中は一体どうなっているんでしょうか?



いざ潜入です!



苗テラスについて解説してくださる井出さん。最先端の設備に驚きを隠せない渡邉。



これは播種から約14日目の苗だそうです!



トマトのシーズン中はこのような感じです。これはすごい!


































































テラス内で制御しているのは温度や湿度、光の量、二酸化炭素濃度などですね。入口の横にあるコントロールパネルで操作できます。
そういえば苗の奥の方、壁にはたくさん穴が空いていますがこれは何ですか?


































































葉は光合成を行う際、気功から二酸化炭素を出しますよね。そうすると葉の裏面に二酸化炭素の薄い層ができます。 これを「葉面境界層」と言うのですが、この境界層を壊さないと光合成が活発に行えなくなってしまうので、ファンで風を起こして境界層を壊してあげているんです。
苗テラスはこれらを一貫して管理できるので、結果的にとても良い苗ができます。すごく役立っていますよ。
トマトの栽培については、学生の頃に多少勉強したつもりだったのですが、ここまで進歩しているものなんですね!


































































さて、お昼の時間になりましたし一旦休憩しましょうか。午後は販売に関する業務も体験してもらおうと思います。
オランダは農業の先進国として有名。オランダでトマト農家というと誰もが憧れる職業の一つだそうで、日本で言うプロ野球選手の様なステイタスなんだそうです。
最新の設備について説明を受け、時間は間もなく昼の12時。
事務所に戻った一同はスタッフの方と一緒に昼食を取り、1時間しっかりと休憩をしました。


































実はうちのトマト、100%ロスが出ないんです。
コレも企業秘密なので詳しくはお教えできませんが、統計データを集めながら袋詰めの方法もかなり研究していまして。
簡単に言えば、「お客さまに手に取ってもらえるような袋詰め」を心がけているんです。
これまで井出さんのお話を聞いていると、本当に繊細で何気ないところまで着目していますよね。
細やかなところにも努力を惜しまないことこそが、成長の秘訣なのですね!
































午後の開店と同時に、お客さまが次々と来店します。急きょ渡邉も店頭で接客することになりました。



袋の詰め方にもコツがあるそうです。真剣に耳を傾ける渡邉。



苦戦しながらも完成です!こうして袋詰めされたトマトが、商品として店頭に並びます。



急きょ店頭で接客のお手伝い。お客さまとのコミュニケーションも大事なお仕事です!


































車に揺られること20分。JAが運営する地域のファーマーズマーケット「わいわい市」に到着です。
渡邉もわいわい市オリジナルキャップをかぶって陳列のお手伝いをすることになりました。





































































藤沢市のファーマーズマーケット「わいわい市」です。市内で生産された農作物が並びます。



「わいわい市キャップ」を受け取ります。これで生産者の仲間入り!



井出トマト農園の一員として搬入のお手伝いをします!



裏口から潜入です!



井出トマト農園に割り当てられた区画にトマトを並べます。



レジ横には井出トマト農園自慢の加工品が並んでいました!
並び終えて早々、お客さまがどんどんトマトを手に取っていき、2~3分で半分以上売れていきました。
“飛ぶように売れる”とはまさにこのことです。


































































ここではトマトを手に取ってくれたお客さまと会話を楽しむ井出さんの姿が見られました。
こうした何気ない会話が、お客さまとの信頼関係を築くために重要なのだと感じた取材班。
井出さん曰く「こうした会話から次の改善点が見つかる」とのこと。
“何事もお客さま目線で経営方針を考えている”井出さんの意識の高さを伺えるシーンでした。
その後は農園に戻り、作業再開です。





































配合表に基づいて計量します。



タンクに入れて、水と混ぜます。



人間の手と機械でしっかりかくはんします。


































































肥料づくりで本日の作業は終了。
最後に、井出トマト農園の今後について、少しインタビューをさせていただきました。





































































井出トマト農園のこだわり①直売所では試食・試飲OK!!ぜひ美味しさを知ってもらって、購入してほしいとのこと。



井出トマト農園のこだわり②商品に貼るラベルのデザインにもこだわります。



井出トマト農園のこだわり③商品購入時には毎月発行の「イデトマトニュース」を同封。いつも同じパンフレットを同封するよりも、お客さまに喜んでいただけるそうです。
都心に近いこの立地も強みになりますね。近隣の方にとっては生活の一部になりそうです。
でも、少し気になるのは、新たな事業を展開するとなると、今以上のトマトの収穫量が必要になってしまいそうな気がしますが、生産については、やはり藤沢市内で規模を拡大していく予定なのですか?


































































・・・こんなことを聞くのは失礼ですが、お仕事で失敗などはしないのでしょうか? お話を聞く限り、なんでもうまくいってらっしゃるような感じがします。。。


































































天候の被害は何度も経験しましたし、ハウスの設備が盗まれたこともあったり、お客さまに指摘されることも沢山あります。
でも失敗があったからこそ次の改善点を見つけて成長できますし、そうして農園が大きくなってくれば、 さっき話した直売所やレストランも実現できるものになります。成長の原点は失敗にあると思いますよ。
井出さんには農業のことだけでなく、それ以外のこともたくさん学ばせていただきました。
それと、農業ジョブから就農された社員の方もいらっしゃるとのことなので、後日インタビューに伺いますね!


































































都内からでも日帰りで来れますし、また遊びにきてくださいね!美味しいトマトを作って待っています!



「美味しいトマトを届けたい」という熱い想いと、収穫から販売に至る隅々まで行きわたった気配りが、驚異の成長を続ける理由なのではないでしょうか。現代農業の一つの成功モデルを見学して、取材班一同とても勉強になりました。農園の今後の事業展開にも注目です!