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ふるさと納税の仕組み・農家への影響

ふるさと納税の仕組みとは?
農業へのメリット・デメリット

近年、ふるさと納税の人気が高まっています。寄附に対するお礼の品(返礼品)として地域の名産品などが届くことから、ネットショッピング感覚で利用する人も多くいます。アイデアを凝らしたユニークな返礼品も登場しているなど地方自治体間での競争も激しく、盛り上がりを見せています。

ふるさと納税とは?

ふるさと納税を「寄附をすると返礼品をもらえるサービス」などと認識している人は多いのではないでしょうか。
しかし、ふるさと納税は自分が生まれ育った「ふるさと」を応援できる制度としてスタートしました。就職・進学などで都会に出る人は多く都会の税収は増えていますが、「ふるさと」は人口減少によって税収も減少傾向です。そこで、『自分を育んでくれた「ふるさと」に貢献できる制度があっても良いのではないか』ということから、地方活性化を目的としてふるさと納税が誕生したのです。
ふるさと納税によって寄附金が集まり、活気を取り戻す「ふるさと」も増えています。

ふるさと納税の仕組み

「納税」という言葉がついているふるさと納税ですが、実際には地方自治体への「寄附」です。生まれ育った地域に限らず、応援したい地域を自分で選んで寄附できます。

ふるさと納税を通じて自治体に寄附を行うと、寄附を行った自治体から特産品などの返礼品がもらえます。「寄附で特産品がもらえる」というだけでは、ネットショッピングと変わりありませんが、ふるさと納税は住民税の減税・所得税の還付が受けられるため、自己負担2,000円で返礼品をもらうことも可能なのです。

2,000円で返礼品がもらえる!?利用者のメリット

納税可能な金額内で寄附を行うと、合計寄附額から2,000円を引いた額については所得税・住民税の控除が受けられます。つまり、実際の自己負担額2,000円で、特産品をもらうことも可能です。全国各地のお肉や海産品、野菜などの特産品をお得に楽しめるのです。
(納税可能な金額は所得や家族構成により異なり、医療費控除・住宅ローン控除などを考慮する必要もあります。)

利用者にとってのメリットは、「お得に返礼品をもらえる」ということが注目されがちですが、応援したい「ふるさと」や地方自治体に貢献できるという大きなメリットもあります。

ふるさと納税による農業への影響

ふるさと納税が人気となり、さまざまな農畜産物が返礼品として提供されていることから、農業界にとって大きなチャンスであり、農家には多くのメリットが期待できます。
しかし、その一方でふるさと納税による農業界への悪影響が懸念されているのも事実です。

ふるさと納税による主な3つのメリット

地域によって、ふるさと納税への取り組み方も違えば扱う品目やサービスも違い、得られるメリットは違ってきます。しかし、次に紹介するようなメリットをはじめ、さまざまなチャンスをつかむきっかけになり得る制度だと言えるでしょう。地域活性化に向けて上手に活用することが、都道府県および市区町村に求められています。

メリット1 農村地域の活性化

寄附金を集めることによって、さまざまな事業展開が可能になり、地域を活性化できます。地方税収をふるさと納税額が上回るほど寄附金が集まっている自治体もあり、農村地域のさまざまなプロジェクトに活用されています。

寄附金の使い道は地域によって異なりますが、農業支援に活用する自治体も多く、農業が抱える担い手や所得、非効率な農地利用などの問題を解消すべく、6次産業化に向けた環境整備に取り組む自治体もあります。

メリット2 消費者とつながるチャンスが増える

ふるさと納税の返礼品が、消費者と生産者を直接つなげるきっかけとなり、リピーター獲得につながるチャンスとなっています。ネットショップを訪問してくれるリピーターなど、ファンを獲得することによって注文を増やしている生産者も多いです。
また、ふるさと納税がきっかけでその地を訪れる人(交流人口)が増えると、他産業の発展にもつながり、多くのメリットが期待できるでしょう。

消費者と交流を持ち、利用者の喜びの声を聞くことができることは、生産者の意欲向上にもつながります。「美味しかった」という声だけでなく、「その土地に行ってみたい」という声が聞けることは、大きな喜びとなります。

ブランド力の向上

近年はふるさと納税サイトが多数登場し、農産物などの特産品を露出できる場が増えています。上手に利用することで、返礼品を通して地域のブランド力や知名度を高めることができるでしょう。ふるさと納税が、地域や特産品の魅力をアピールする場にもなるのです。
ブランド価値が、直接販売における売上アップや取引先の増加などさまざまなチャンスにつながるだけでなく、高値の安定化、持続的に売れる農産物生産にもつながっていくでしょう。
また、ブランド力の強化は生産者所得や雇用の増加につながり、地域農業が抱える問題解決にもつながることが期待できます。

ふるさと納税にもデメリットがあります

近年盛り上がりをみせるふるさと納税ですが、さまざまな問題点も指摘されていて、政府が制度見直しを表明しています。
現在の制度における自治体や生産者にとってのデメリットには、次のようなものが挙げられるでしょう。今後の制度改革によって「ふるさと」や農業者、そして利用者にとって、さらに良い制度になっていくことが望まれます。

デメリット1 コスパが求められる傾向がある

もともとは「ふるさと」を応援する制度でしたが、現在は豪華な特産品をもらうことが注目されている傾向があると言えるでしょう。肉やカニ、季節のフルーツなどを返礼品としている自治体に人気が殺到し、どんなに良い農産物であっても注目されず、苦労している自治体もあります。

高額でコスパに優れた返礼品が人気を集めているため、家電や商品券などの地域との関係性の薄い返礼品も登場しています。これまでに、総務省から「返礼品を地場産品に限定」「返礼品の還元率3割以下」といった通達がありましたが、強制するものではなく、守っていない自治体が存在することも事実です。
そのため、2018年9月に総務省は返礼品の見直し状況の調査結果や、制度の見直しを検討していることを公表しました。これにより、通達を守っていない返礼品は減少しています。

デメリット2 返礼品競争に勝ち抜く必要がある

ふるさと納税により、地域や特産品をPRできるチャンスが増えたのは事実ですが、自治体間での競争が過熱していて、勝ち抜かなければ地域のPRも税収を増やすこともできないというのが実情です。
単に地域の特産品を前面に出しただけでは、寄附をしてもらえません。創意工夫や企画力、PRなどが必要となり、自治体や生産者が協力・連携して取り組むことが必要になるでしょう。

市場競争と同様、ふるさと納税においても競争があり、消費者のニーズに応えた生産やサービスが必要なのです。

デメリット3 地域農業衰退のリスクがある

ふるさと納税での売上を優先し、従来行ってきた取引を減らしてしまうと、産業の衰退を招きかねないことが懸念されています。税収に頼って自治体への依存度を高めるのではなく、自立的な経営によって安定した収入を得られる産業でなければ、農業の発展につながるとは言えないでしょう。

デメリット4 安くなければ買ってくれない可能性がある

ふるさと納税によって地域の特産品を知ってもらえたとしても、利用者は正規の価格で再度購入してくれるとは限りません。一度自己負担2,000円でもらえたものに、高い金額は払ってくれない可能性もあるのです。利用者との交流を図り地域を知ってもらい、地域や特産品の本当のファンになってもらうことが大切になってくるでしょう。

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寄附金の使い道(プロジェクト)が重要に

ふるさと納税では、多くの利用者にとって返礼品が重視されがちですが、地域によって「寄附金」の使い道はさまざまです。寄附金を活用して農業支援を行っている地域もあれば、子育て支援や歴史的建築物の改修を行う地域もあり、地域活性化に向けた多種多様な活用がなされています。

近年、返礼品競争の過熱が問題視されていますが、寄附金の使い道(プロジェクト)を知ってもらい、地域や地域の活性化に向けた取り組みを応援してもらうことが大切です。利用者に喜ばれる返礼品を送ることはもちろんのこと、魅力的な地域の取り組みが、継続的に応援してくれるファンの獲得につながっていくでしょう。

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この記事を書いた人

  • 農業ジョブ 編集部
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