露地栽培とは?メリットと難しさ・1年目の費用・始め方をデータで解説
畑で育てる農業の基本から、強みと弱み、1年目のお金、独立までの道のり
春のキャベツ、夏のとうもろこし、冬の大根。どれも、屋根のない畑で育てる「露地栽培」でおなじみの野菜です。大きな施設がいらないぶん始めやすい反面、天気と相場からは逃れられない。どんな農業で、いくらかかり、どう始めるのか。農林水産省などの統計をもとに整理しました。
露地栽培とは
露地栽培とは、ビニールハウスなどの施設を使わず、屋外の畑で作物を育てる方法のこと。日光や雨をそのまま受け、季節の気温の変化に合わせて育てていきます。
露地と施設のあいだにある工夫
ただし、畑の作物がまったくの「むき出し」とは限りません。露地栽培でも、簡易な資材を組み合わせて作物を守ったり、育つ時期を調整したりしています。
| 資材・方法 | どんなものか |
|---|---|
| マルチ | 地面をフィルムなどで覆う。地温を上げたり、雑草や乾燥を抑えたりする |
| べたがけ | 不織布などを作物の上に直接かける。保温や防虫に使われ、トンネルより手軽 |
| トンネル | 畝にアーチ状の支柱を立て、小さなビニールの覆いをかける。保温して早く育てる |
| 雨よけ | 屋根だけをかけて雨を防ぐ。トマトなど雨に弱い作物で使われる |
農林水産省の「施設園芸をめぐる情勢」でも、日本の施設園芸は、野菜などの出荷期間を延ばすために、ビニールトンネルや雨よけ施設から温室へ、さらに環境を制御する装置の導入へと高度化してきたと説明されています。露地と施設は、きっぱり二つに分かれるものではなく、地続きの関係にあるわけです。
露地で育てる主な作物
代表的なのは、キャベツや白菜、大根、レタスなど、寒さに比較的強い野菜。ほかにもブロッコリー、玉ねぎ、じゃがいも、とうもろこし、アスパラガスなど、多くの野菜が畑で育てられています。トマトやきゅうりも露地で作れますが、霜に弱いため、栽培できる期間は限られます。
地域ごとの気候を生かした産地があるのも露地栽培の特徴です。夏でも涼しい高原でキャベツやレタスを育てる高原野菜(群馬県の高原野菜農家の1年)、広い農地で大規模に生産する北海道の畑作など、気候や土地の広さに合わせた栽培が各地で行われています。
作型と産地リレー
露地栽培では、同じ野菜でも、種をまく時期によって「春まき」「夏まき」「秋まき」などの作型(栽培の型)に分かれます。作型によって、育つ時期の気温や日の長さが違うため、作りやすさや品質の出やすさも変わってきます。
適した時期は、地域の気候によってもずれます。夏でも涼しい冷涼地と、冬でも暖かい暖地では、同じ作型でも種まきや収穫の時期が違う。このずれを生かして、季節ごとに出荷の中心となる産地が移り変わっていく。この仕組みが「産地リレー」で、施設園芸とともに、一年を通した野菜の出荷を支えています。
働く地域を選ぶときは、その土地がどの季節に出荷する産地なのかを調べておくと、忙しくなる時期の見当がつきます。
数字で見る露地栽培
まずは野菜づくり全体の規模から。農林水産省がまとめた「施設園芸をめぐる情勢」(2026年5月)では、野菜の産出額は2兆5,510億円(2024年)で、農業総産出額の24%を占めます。その野菜づくりの中で、露地栽培と施設園芸を比べた数字も紹介されています。
| 項目 | 露地栽培 | 施設園芸 |
|---|---|---|
| 10aあたりの所得 | 施設野菜作の約6分の1 | 露地野菜作の約6倍 |
| 10aあたりの労働時間 | 施設野菜作の約6分の1 | 露地野菜作の約6倍 |
| 経営費に占める光熱動力費 | 露地ピーマン1%、露地みかん4% | 施設ピーマン・ばら28%、施設温州みかん36% |
面積あたりの稼ぎは施設に及ばない一方、手間も燃料代もずっと少ない。そのため露地栽培では、広い面積で効率よく量をつくることが基本になります。
露地栽培のメリット
初期費用を抑えやすい
大きなハウスや暖房設備を建てる必要はありません。畑と、トラクターなどの機械を中心に始められます。
燃料費の負担が小さい
ハウスを暖めないので、光熱動力費が経営費に占める割合はわずか。燃油価格が上がっても、施設園芸ほどの打撃は受けにくくなります。
旬の作物を、季節のリズムで育てられる
作物が本来育つ季節に栽培するため、その時期らしい野菜を届けられます。かつてトマトも、露地で夏に収穫する野菜でした。
輪作で連作障害を避けやすい
季節ごとに作物を入れ替え、同じ畑で科の違う作物を順番に育てていく。こうした輪作がしやすいのも露地の強みです。
規模を広げやすい
面積を増やすのに、施設を建て足す必要はありません。農地と機械さえ確保できれば、規模の拡大に踏み出せます。
露地栽培の難しさ
天候の影響を直接受ける
長雨や日照不足、干ばつ、台風、霜。畑の作物は天気の変化をまともに受け、収穫量や品質が年によって大きく変わります。
病害虫と鳥獣の被害
畑は外に開かれているため、虫や病気のほか、シカやイノシシ、カラスなどに作物を食べられることも。防虫ネットや電気柵などで守る対策がとられています。
相場に収入が左右される
同じ野菜が一斉に出回る旬の時期は、価格が下がりがち。豊作の年に、かえって収入が伸びないこともあります。契約栽培や直売など、売り先を工夫して価格を安定させる生産者もいます。
面積がないと売上が立ちにくい
10aあたりの所得は施設野菜作の約6分の1。まとまった売上を得るには、ある程度広い農地が必要になります。
忙しさの波と、屋外での作業
植え付けと収穫の時期に作業が集まり、繁忙期と閑散期の差が大きくなります。真夏の暑さや冬の寒さの中での作業、伸び続ける雑草との付き合いも、畑に立つ人の日常です。
露地野菜で就農した人の、1年目のお金
露地野菜は、新しく農業を始める人によく選ばれている作目です。全国農業会議所が新規参入者(農家出身ではなく、新たに農業経営を始めた人)を対象に行った「令和6年度 新規就農者の就農実態に関する調査」では、販売金額の第1位の作目を露地野菜とする人が30.3%。施設野菜(32.0%)に次いで2番目でした。
では、1年目にどれくらいのお金がかかり、どれくらい売れたのか。調査の数字は次のとおりです。
| 露地野菜・就農1年目 | 平均 | 中央値 |
|---|---|---|
| 営農面の費用(機械・施設などへの費用+必要経費) | 515万円 | 350万円 |
| うち機械・施設など | 371万円 | 250万円 |
| 営農面の自己資金 | 252万円 | 150万円 |
| 自己資金と費用の差額 | −263万円 | −200万円 |
| 生活面の自己資金 | 163万円 | 100万円 |
| 農産物の売上 | 201万円 | 100万円 |
1年目の費用は中央値で350万円。施設野菜の700万円と比べると、ちょうど半分です。ただ、1年目の売上も中央値で100万円と小さめ。軌道に乗るまでの生活費をどう確保するか。露地栽培の資金計画では、この期間の暮らしが大きな焦点になります。
出典:一般社団法人全国農業会議所 全国新規就農相談センター「令和6年度 新規就農者の就農実態に関する調査」(就農準備資金・経営開始資金などの受給者を含む新規参入者が対象)
露地栽培で問われる技術
露地栽培で物を言うのは、土づくりと段取りの力。作物に合った土を整え、天気予報とにらめっこしながら、種まきや収穫、防除の日取りを組み立てていきます。作付けの時期を少しずつずらせば、出荷できる期間が延び、収入の波もならせる。そうした作付計画づくりも、露地の腕のうちです。
広い畑を少ない人数で管理するには、機械を使いこなす力も問われます。最近は、ドローンによる農薬散布や生育の確認、自動で走るトラクターなど、スマート農業の技術も露地の現場に入ってきています。ドローンの活用は農業用ドローンとは?活用事例や価格は?で取り上げています。
露地栽培に向いている人
・天気予報を見て、その日の予定を柔軟に組み替えられる
・トラクターなどの機械を使って、広い畑で作業するのが好き
・繁忙期にしっかり働き、閑散期にまとまった時間を取るリズムが合う
・暑さや寒さの中でも、屋外で体を動かすのが苦にならない
・旬の野菜や、季節の移り変わりに興味がある
露地栽培を始めるには
1. 露地野菜の農業法人に就職する
露地野菜や畑作を手がける法人で働けば、給与をもらいながら、土づくりや機械の操作、作付計画を現場で覚えられます。季節がひと巡りする1年を経験すると、作業の流れが一気につかめるはずです。
2. 研修で基礎を身につける
都道府県の農業大学校や、地域の先進的な農家のもとで学ぶ方法も。国の「就農準備資金」のように、研修期間中の生活を支える制度があります。
3. 農地を確保して独立する
先の調査では、新規参入者が就農時に苦労したことの上位に「農地の確保」が挙がっています。広い面積が必要な露地栽培では、なおさら大きな課題です。地域の農業委員会や、農地の貸し借りを仲介する「農地バンク」(農地中間管理機構)などに相談しながら探していきます。使える支援制度は農業で使える補助金・助成金まとめに載せています。
露地野菜の現場の仕事内容や流通の仕組みは、露地野菜とは?代表的な作物や出荷までの過程について解説!で紹介中です。
まずは畑で、季節をひと巡り
春、まだ冷たい土に苗を植える。梅雨の晴れ間を逃さず、トラクターを出す。秋、収穫を終えた畝に次の種をまく。露地栽培の1年は、天気と季節に押し出されるように進んでいきます。農業法人の一員としてその1年をくぐり抜け、霜の降りた冬の畑に立ったとき。この仕事を続けたいかどうかは、きっと自分の体が知っています。



















