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環境保全型農業に取り組む農業者インタビュー

多くの分野で「持続可能な開発目標」(SDGs)の目標達成に向けた取り組みが行われている昨今。農業ジョブに掲載されている群馬県の農業者の中にも、環境に配慮した持続可能な農業に取り組んでいる方が多くいます。

今回はそんな農業者にインタビューを行い、取り組みのきっかけや内容、そして農業に興味を持っている皆さんへのメッセージをお伺いしました!

環境保全型農業”とは?

環境保全型農業とは、農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の低減に配慮した持続的な農業です。

日本では2021年に、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目指す「みどりの食料システム戦略」が策定され、翌2022年には「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(みどりの食料システム法)」が成立しました。

これを受けて群馬県では、持続可能な食と農の地域循環システムの実現を目指し「群馬県みどりの食料システム基本計画」を独自に策定。その一環として、環境負荷低減に関する以下のような活動を促進するため、多方面からのさまざまな取り組みや支援を積極的におこなっています。

・環境に配慮した農業の推進
・有機農業の生産拡大
・温室効果ガス排出量の削減
・耕畜連携の推進
・新たな経営感覚を持った担い手の育成
・有機農畜産物等の販路拡大 など

株式会社長沼農園さんにインタビュー!

今回インタビューさせていただいたのは、群馬県伊勢崎市でニラをメインにさまざまな野菜や米・麦などを生産している長沼農園さんです。美味しい野菜は健全な土づくりからだと考え、有機物を使い、いかに土が本来持っている力を引き出すかを重要視。「日々の食卓に、いつも私たちの野菜があってほしい。」そんな思いで毎日の食卓に責任と誇りを持ち、真心を込めて育てています。

代表取締役社長 長沼 芳憲(ナガヌマ ヨシノリ)さん
【年齢】37歳
【生産品目】ハウスニラ、露地ニラ、ネギ、ゴボウ、ブロッコリー、枝豆、米、小麦、 キャベツ、トウモロコシ ※2024年9月時点
江戸時代から代々続く長沼農園の次男として生まれる。大学で経営学科を専攻し、経営を通して社会に貢献することや、経営者自体に惹かれたことなどがきっかけで農園を継ぐことを決意。卒業後すぐに就農し、2016年から代表を務めている。

Q1 環境負荷の低減に取り組むことを決めたきっかけは何ですか?

大学で経営のことも勉強していたので、生産的なところよりも経営的なところを改善していけばいいのかなと思っていたんですけど、実際に就農してみると、生産面でも課題が多いなと感じました。

毎年変わる環境の中で同じ品質の農産物を作るのは、どうしても難しいことなんですけど、やはり生産を安定させる必要がある中で、自分で勉強したり県外の農家さんを視察させていただいたりしたことがきっかけで、健全な土づくりにこだわるようになりました。

「環境負荷低減に取り組もう」として始めたというよりは、結果的に環境負荷低減につながっていたという感じですが、そこからさらに意識して取り組むようになりました。

Q2 具体的にどのようなことに取り組んでいますか?

環境負荷低減といっても色々あると思うんですけど、弊社の場合は土づくりに関わるところが大きいです。堆肥や、緑肥(りょくひ)といってトウモロコシや牧草のような草丈の高いものを育てて、収穫しないで土にすき込みそれを栄養分にするといったものを使って育てています。

もちろん土壌分析もしていまして、畑ごとに必要な養分、足りてる養分と足りていない養分が把握できるので、既に養分がしっかり入っているのであればそれを減らして、環境負荷を抑えています。

また、耕運という土を耕す作業では、トラクターの後ろにロータリーという作業機があってそれが回転するような機械で土を耕してあげるんです。その回転速度を抑えることに気を付けています。過剰な回転を防ぐことは土にも良いですし、燃費も向上するんです。そういったのも環境負荷低減につながると思います。

Q3 就農されてから生産の課題が多いと感じられたとのことですが、なぜそこから土づくりにこだわろうと思ったのですか?

良い農産物を生産するためには色んな要素があります。土づくりだけではなくて、例えば良い苗を作るのも一つですし、苗を植えたあとの管理を丁寧にやる、草が生えないように、などそういったところももちろん大事なんですけど、やはり作物が生育するうえで一番大事なのは根っこだと思っています。
いかに良い根っこを張らせるか、それには土壌環境が密接に関わってくるので、土が作物の生育にとっては一番大きい部分になると考えて、土づくりに取り組んでいます。

Q4 環境負荷低減に対する思いを教えてください。

地域には畜産関係の方がたくさんいらっしゃるんですが、実際そういう堆肥がうまく使われていないと思っています。堆肥を活用したい農業者がいても、堆肥をまくための機械の調達ができないことが要因の1つですね。

ある程度規模のある農家さんであればそういった設備もしっかり導入しているので、散布する機械を調達して堆肥の販売をしているんですけど。

堆肥を有効活用できればコスト削減にもつながりますし、肥料を外国に依存するのではなく日本にあるものを活用することで、食糧安全保障とかにもつながっていくのかなと思っています。

そういったところで自社では、堆肥をまくような設備や車両を整えて地域に貢献できたらいいなというのは構想としてはあります。今は大規模な農家さんにまいてもらってるんですけど、こちらで整えて、まだまだ利用していない生産者さんにも利用してもらえばうまく資源が循環できるのではないかと思っています。

Q5 これからの農業にはどんな魅力がありますか?

人が生きていくうえで、「食」ってやはり大事なもの。そこを支えていくということに対して私もすごく誇りをもって仕事に取り組んでいます。資源を多く依存しているので盤石ではないなと思ってはいるのですが、自分たちの取り組みによって、何かあった時の食料確保にも貢献できるのかなと思っているので、そういったところも一つのやりがいです。 また、作物の肥料や農薬とか化学的なところもそうですし、機械に関する知識も身につけなくてはならないしキリがないぐらい日々探求し尽くせる。いかに良いものを作るか、効率的にやるか考え尽くせるところに魅力を感じられる方は面白く取り組めるかもしれないですね。

Q6 農業に興味のある方にメッセージをお願いします。

いいものを作るには経験も必要だとは思いますが、地球温暖化が進む中で、新しい技術に対してもアンテナを張るなど、常識に囚われない発想も非常に大事になってきていています。

若い人の方がそういったことには長けていて、実際に先輩農家より早く良いものを作る方もいますので、どんどん農業に飛び込んできてもらえたらいいなと思います。

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