農閑期はチャンス!?群馬県農家の農閑期の過ごし方に迫る!

農閑期とは?
農閑期(のうかんき)とは、農業において作業が比較的少なくなる時期のことを指します。
一般的な会社員とは異なり農家は作物によって農閑期が存在しています。一部の農家はこの期間を利用して副業を行うことがあります!
例えば、露地栽培を中心とする農家は冬の農閑期に作物の収穫量が減ってしまうために、別の仕事をして収入を得ているケースが多いです。
農業ジョブでは群馬県農業の魅力を伝える一環として農閑期にどのように収入を得ているのかについて、実際に農家さんにインタビューさせていただきました!!
小林竜太さん(キャベツ農家 嬬恋村)



小林さんは群馬県嬬恋村でキャベツ、じゃがいも、さつまいもを手掛ける甘甘(かんかん)ファームという農場を運営しています。「甘い」を2つ重ねたこの農場の名前はキャベツの和名が「甘藍(かんらん)」、さつまいもの和名が「甘藷(かんしょ)」であることを由来としています。
代々農家だという小林さんの家系は現在で4代目になり、嬬恋村の農業に貢献し続けています!
甘甘ファームでは主要作物としてキャベツ19ha、更にじゃがいも50a、さつまいも10aを栽培し、農閑期ではさつまいもを焼き芋として地域のスーパーの駐車場などで販売しています。
農繁期のスケジュール



キャベツの収穫が本格化する夏場に甘甘ファームは農繁期に入ります。
農繁期(のうはんき)とは、農業において作業が最も忙しくなる時期のことを指します。
この期間では朝の4時から午後5時頃まで農作業を行います。
反対に冬の11月から2月の期間では農閑期となります。
そこで、小林さんの代から自農業で栽培したさつまいもを農閑期に焼き芋として販売することで収入を得る事業を開始しました。
農閑期になぜ焼き芋販売を?



甘甘ファームでは技能実習生の方が働いており、冬の期間に技能実習生を継続雇用するための仕事がない、という事が課題となっていました
そこで、技能実習生が冬の間にできる仕事として農産物の加工(=焼き芋)を開始しました。
小林さん曰く、さつまいも栽培の特徴は栽培難易度の低さと保存の難しさです
さつまいもは育てること自体は他の作物と比べて少し簡単ですが、収穫したさつまいもを長期間保存するためにはシビアな温度管理が必要になります。
そこでその年に収穫したさつまいもを加工品として売りさばくために焼き芋販売を行い、冬季の収入としているのです。
焼き芋は地域のスーパーマーケットの駐車場で週末に販売しています。5時には竈に火をつけて10時頃から販売を開始して夕方に撤収します。週末の買い物客にターゲットしてスーパーの帰りに寄りやすい販売形態を採っています。
近年の焼き芋ブームについて
最近では量販店などでも焼き芋の販売を拡大しつつあり、外国人観光客も日本の焼き芋に親しんでいます。
焼き芋販売で重要な要素のうちの一つがその香りです。
近所のスーパーなどでも販売されている焼き芋は、入り口や出口付近に置いて居りことが多く、その甘い、いい匂いに釣られてついつい買ってしまいます。
甘甘ファームの焼き芋はパレットの廃材を利用した薪で浅間山の溶岩石を加熱して作っています。その薪の香りと焼き芋の甘い匂いが集客効果に一役買っているそうです。スーパーを訪れた家族連れの方はもちろん、近隣のスキー場に観光に来た外国人の方に買っていただくことも多いそうです。
今後の展望
小林さんの代から始まったこの焼き芋事業ですが、今後は事業安定を目指して取り組んでいくとおっしゃています。あくまでもメインはキャベツの栽培であり、農閑期の収入の補填と雇用の安定化のために始めた当初のスタンスのまま事業に取り組んでいくそうです。
倉澤 健吾さん(ほうれんそう農家 昭和村)



続いてインタビューに応じてくださったのは群馬県昭和村にてほうれんそう農家を営む倉澤さんです。
昭和村は群馬県の北部、赤城山の北麓に位置する村で、『やさい王国』として知られており、生産量日本一のこんにゃくの他、ほうれんそうやレタスなどの高原野菜の生産が盛んです。
農繁期のスケジュール



倉澤さんはほうれんそうを露地で約30aハウスで約110aの面積で栽培しています。
ハウス栽培では4カ月を1サイクルとして通年で出荷できるような体制を整えているといいます。
ハウス栽培は6月から9月まで収穫をするので、露地の播種とハウスの収獲が重なる9月が最も忙しいです
また、群馬県昭和村は積雪地域のため、冬場の露地栽培は難しくなります。
農閑期の過ごし方
倉澤さんは冬の農閑期で除雪作業をして副収入を得ています。
昭和村では毎年雪が降るため、主要道路や高速道路の除雪作業が必須になります。
建設会社から除雪業務が委託されることが多く、農閑期に入った農家の方々が依頼を受けることが多いと言います。
倉澤さんは12月からほうれんそう栽培を再開できる2月末まで除雪業務を行っています。昭和村の他の農家の方々からの紹介で始め、こういった除雪作業は昔から地域の農家の冬の過ごし方として定着しています。
また、除雪作業以外にもスキーのインストラクターといった積雪地域ならではの仕事をしている方も多いです。
農閑期特有のコミュニティ



先ほどでも触れた通り昭和村では農閑期に除雪作業をする農業者が多いため、
除雪作業を通じて農家の方々とコミュニティを築くことができるといいます
新規就農者としてほうれんそう栽培に参画した倉澤さんは、この除雪コミュニティで農業にまつわるアドバイスをいただいたそうです。
農外収入の確保に加え、農業者からの情報収集、人脈形成といった一つのコミュニティに所属するメリットも得られました。除雪作業では額面以上の恩恵をえられるのです。
今後の展望



倉澤さんも小林さんと同じように、農閑期の副業はあくまでも本業の収入を支えるための一つの手段と考えています。
今後は農閑期は除雪作業で収入を補填しつつ、ハウスを増設し、いちごなどの新しい作物に取り組んでいきたいと言います。
農閑期とどのように向き合うか
小林さん、倉澤さんの群馬県の二名の農家さんに農閑期の過ごし方についてインタビューさせていただきました。
お二人に共通して言えることは、「農閑期での収入は本業の収入を補填するものであり、本業ができるのであればそちらを優先する」というものでした。
しかし、厳しい冬の中などの農業条件の悪い時期ではどうしても別の収入源を確保する必要があります。焼き芋販売や除雪作業のほかにもスキー場での仕事や冬ならではの農産物など農閑期を乗り越える手段はあります。
地域の特色などをリサーチしてどのように農閑期と向き合うのかが収入安定のために必要不可欠です!!