▲top
農業求人情報サイト

世界農業遺産とは?

世界農業遺産とは?
日本の伝統農業が新たなビジネスに

農業は、人類の長い歴史の中で文化の形成や環境維持など、さまざまなものに影響を与えてきましたが、近年はロボット技術やICTといった新しい技術を駆使した農業も登場し、従来の農業を継承していくことが困難になってきています。
そうした中で、世界的・国内的な認定制度により、現在まで継承されてきた農村文化や田園風景といった伝統的な農業を未来に継承し、農村地域の復興・活性化につなげようとする取り組みがなされています。

世界農業遺産とは?

世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems[GIAHS]:ジアス)とは、世界的に重要な伝統的農業(農林水産業)を営む地域を、FAO(国際連合食糧農業機関)が認定する制度であり、「世界重要農業資産システム」とも訳されます。
世界農業遺産の認定により、農業や地域環境とともに育まれた文化や技術、景観、生物多様性などを「農林水産業システム」とし、トータル的に保全し、継承していくことを目指しています。

世界農業遺産の認定基準

【食料と生計の保障】
農林水産業が地域の人々の所得や経済に貢献しているか

【農業生物多様性】
農林水産業システムが生物多様性に貢献しているか

【地域の伝統的な知識システム】
伝統的な技術がシステムに含まれているか

【文化、価値観と社会組織】
農林水産業システムが生み出す文化的な面が含まれるか

【優れた景観と土地・水資源管理の特徴】
優れた景観や土地・水資源の管理ができているか

世界農業遺産が創設された背景には、近代農業によって、世界各地の環境問題や生物多様性、地域固有の文化・景観などが失われつつあるということがあります。
上記の5つの項目をはじめとした、農林水産業システムの維持・継承への取り組みがなされていることが求められます。

世界遺産との違い

世界遺産は有形の不動産が対象であり、厳正な保護が目的です。しかし、世界農業遺産は、農林水産業を営む地域が対象であり、保全はもちろん、持続的に活用することが目的です。
つまり、世界遺産は現状を変えませんが、世界農業遺産は地域環境に適応し、新たな技術を取り入れることが可能です。近代的な部分を取り入れ進化を続けながら、伝統的技術を残していけるのです。

世界農業遺産に認定されている日本の地域

2022年1月時点で、世界農業遺産には世界で22ヶ国62地域が認定されていて、日本では次に紹介する11地域が認定されています。

トキと共生する佐渡の里山
[新潟県/2011年認定]

能登の里山里海
[石川県/2011年認定]

静岡の茶草場農法
[静岡県/2013年認定]

阿蘇の草原の維持と
持続的農業
[熊本県/2013年認定]

クヌギ林とため池がつなぐ
国東半島・宇佐の農林水産循環
[大分県/2013年認定]

清流長良川の鮎
[岐阜県/2015年認定]

みなべ・田辺の梅システム
[和歌山県/2015年認定]

高千穂郷・椎葉山の
山間地農林業複合システム
[宮崎県 /2015年認定]

持続可能な水田農業を支える
「大崎耕土」の
伝統的水管理システム
[宮城県/2017年認定]

静岡水わさびの伝統栽培・
発祥の地が伝える人と
わさびの歴史
[静岡県/2018年認定]

にし阿波の傾斜地農耕システム
[徳島県/2018年認定]

美しい風景が魅力!全国各地の農業求人はこちら

世界農業遺産に認定されるメリット

世界農業遺産に認定されることによって、維持・継承していくための補助金などがもらえるわけではありません。しかし、地域の農林水産業が世界的に認められることによって、地域の活性化や農業システム維持が推進されることにつながるでしょう。
また、世界的に知名度が高まるため、農産物ブランドとしての付加価値が高まるなど、観光や農業の復興にも効果が期待できます。

例えば、2011年に佐渡市とともに日本で最初に認定された石川県能登地域では認定後、奥能登の4農協が同一の基準を設けた特別栽培米、能登棚田米づくりに乗り出しました。ブランド化を図った結果、生産者の数、作付面積、出荷量ともに飛躍的に伸び、2013年に124トンだった能登棚田米の出荷量は、2016年には270トンにまで拡大しました。
また、奥能登で人気の農家民宿群「春蘭の里」に訪れる観光客も、国内・国外双方から増加しています。

国内版「日本農業遺産」とは

世界農業遺産は、世界的に重要な農林水産業システムが認定されますが、「日本農業遺産」は世界的、そして国内的にも重要な農林水産業システムを農林水産大臣が認定します。2017年3月に初めて選定が行われ、2022年1月時点で22地域が認定されています。

・宮城県大崎地域

・山形県最上川流域

・新潟県中越地域

・富山県氷見地域

・福井県三方五湖地域

・埼玉県武蔵野地域

・山梨県峡東地域

・静岡県わさび栽培地域

・滋賀県琵琶湖地域

・三重県鳥羽・志摩地域

・三重県尾鷲市、紀北町

・和歌山県高野・花園・清水地域

・和歌山県有田地域

・和歌山県海南市下津地域

・徳島県にし阿波地域

・兵庫県南あわじ地域

・兵庫県丹波篠山地域

・兵庫県兵庫美方地域

・愛媛県南予地域

・島根県奥出雲地域

・宮崎県日南市

・宮崎県田野・清武地域

認定基準の違い

日本農業遺産は、世界農業遺産の認定を受けるためのステップという位置付けではなく同列のものとされ、世界農業遺産の認定基準に加え、日本独自の基準が追加されています。

世界農業遺産・日本農業遺産の活用とその成果

世界農業遺産および日本農業遺産に認定された地域では、農業遺産の保全や継承はもちろん、農産物のブランド化や知名度の向上、観光誘致、農業遺産を活用したビジネスなど、地域活性化における一定の成果を挙げています。

しかし、認定による成果はそれだけではありません。世界や国内で重要性が認められることで、地域に住む人が地域資源の大切さを再認識し、自信や誇りの回復につながるでしょう。
このことが、農業遺産に認定されることで得られる、特に大きな成果なのかもしれません。

この記事をシェアする

この記事を書いた人

  • 農業ジョブ 編集部
  • 農業求人情報サイト「農業ジョブ」編集スタッフ。
    仕事の魅力やそこで働く方たちを日々取材しています。

    日本の農業・林業・漁業を盛り上げるべくさまざまな視点から情報を発信中!
こちらもオススメ