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いちご農家の年収は?年間スケジュールも徹底解説!

いちご農家の年収はいくら?仕事内容は?

某テレビ番組の調査で「日本人の好きな果物ランキング」が発表され、その1位に輝いたのは「いちご」でした。
日本人はいちごが大好き。総務省の調査によれば、2022年のいちごの一人当たりの年間購入数量は755gで、支出金額は1,209円でした。これはいちごのパックに換算すると3つ分に相当します!4人家族の場合は合計12パックを買っている計算になるのは驚きです。
また、いちご農家の数は2020年時点で2万3千件以上にも上ります。こうしたいちご農家さんたちの頑張りが、我々の食卓に彩りを添えてくれているのです。

では、いちご農家さんはどんな1年間を送っているのでしょうか。年収も含め、いちご農家さんのリアルを深堀りしていきます!

日本のいちご事情について

いちごの名産地といえば?

北海道から九州まで、全国各地で栽培されているいちご。その生産量の分布はどのようになっているのでしょうか?
トップ5をランキング形式にしてみました。

主要な品種収穫量
1位栃木県とちおとめ24,400t
2位福岡県あまおう16,800t
3位熊本県ゆうべに11,700t
4位愛知県章姫10,600t
5位静岡県紅ほっぺ10,400t

やはりとちおとめで有名な栃木県がいちごの収穫量1位でした。栃木県はいちごの収穫量を55年連続で日本一を誇っています。 栃木の内陸型の気候は、夏と冬、そして昼と夜に大きな寒暖の差があり、 この寒暖の差が甘くておいしいいちごをつくるのだそうです。
本来いちごの栽培は比較的涼しい環境が良いとされ、栽培適温は17~23℃。多雨湿潤の日本はそもそも栽培に向いていませんが、ビニールハウスなどの栽培技術が普及し日本でも育てられるようになったのだとか。

ちなみに輸入いちごは、その90%以上がアメリカからのものです。アメリカでは主にカリフォルニアで栽培されることが多く、排水性の良い土壌がいちごの栽培に向いているそうです。ちなみに世界で一番いちごを作っている国は中国とのことです。

旬っていつなの?

皆さんはいちごの旬がいつかをご存じでしょうか。関東以西の地域では一般的に12~2月頃に最盛期を迎えるとされており、いちご狩りなどの観光農園も1~5月頃をいちご狩りのシーズンとして定めているところが多い傾向です。しかし冷涼な北陸や東北では6月頃までいちご狩りを行っているところもあります。
さらに、他の地方と気候が大きく異なる北海道は6~7月頃がいちご狩りのシーズンです。
ちなみに出荷量こそまだ多くありませんが、夏から秋にかけて収穫される「夏秋(かしゅう)いちご」という種類も北海道や東北、長野県の一部で生産されており、6~11月上旬に出荷されています。

元々ハウス栽培が行われる1960年代頃までは、いちごの旬は春から初夏にかけてでした。春の暖かな陽気によっていちごは目覚め、そこからじっくりと花と実をつけていく習性があったのです。実際にいちごは夏の季語として俳句で詠まれています。
しかし、いちごの需要が増えるのはクリスマスシーズンです。そこに合わせて人工的に旬を作り変え、現在のような「冬の果物」という印象がついたんですね!

いちご農家の年収は?

いちご農家の年収

いちご農家の年収は600万~900万円です。また、いちご農家の平均年収は650万円です。これは、農家全体の平均年収と比べると高い水準にあることがわかります。
次に、農林水産省の「品目別経営統計」(2007)をもとに農業所得率を計算してみましょう。農業所得率を見ると、農業粗収益のうち、農業所得として実現している割合がわかります。
いちご農家の農業所得率は52.8%と施設野菜の中ではトマトに次いで高く、比較的利益を上げやすい経営ができるでしょう。
いちご農家、施設野菜農家、主業経営体、全農業経営体で、10aあたりの平均農業所得と農業所得率を比較するとそれぞれ以下のようになります。

平均農業所得(10aあたり)農業所得率
いちご農家189万円52.8%
施設野菜農家120万円47%
主業経営体53万円18%
全農業経営体25万円8%
農林水産省「品目別経営統計」(2007)、「令和4年 農業経営体の経営収支」(2023)をもとに計算

こうしてみると、やはりいちごは農業の中でもかなり利益を上げやすい作物であることがわかります。

ただし、いちご農家の年収は栽培方法により多少異なります。
例えば、いちごの土耕栽培と高設栽培を比較すると、10aあたりでの、所得率等の違いは以下のようになります。

いちごの栽培方法収量
(kg)
所得
(万円)
所得率
(%)
単価
(円)
単位あたり
生産費
(円)
一時間あたり
所得
(円)
労働時間
(時間)
所得
(千円)
促成・土耕栽培5,00031751.212391080200215843171
促成・高設栽培5,50020930.512451122222112512086

10aあたりに収穫できるいちごの量は高設栽培の方が多いですが、より所得を上げやすいのは土耕栽培であると読み取れますね。一般的には、いちごの栽培方法は土耕栽培を選択されている農家さんが多いです。

いちご農家の年間スケジュール!繁忙期はいつ?

農林水産省の農業経営統計から、いちご農家の労働時間は一人あたり1874時間だと考えられます。平均的な年間労働時間である約1600時間と比較すると、いちご農家の仕事は忙しいと言えるでしょう。
これらの年間労働時間を、仮に一日8時間仕事をしたとすると、労働日数はそれぞれ以下のようになります。

年間労働時間一日の労働時間(仮定)労働日数
いちご農家1874時間8時間234.25日
平均1600時間8時間200日

いちご農家は日本の平均年間労働時間と比較すると労働時間は多いですが、一日に8時間働くと仮定すると、お休みの日は年間130日ほどとなります。いちご農家は忙しい仕事ですが、お休みは十分とることができるでしょう。
とはいえ、生き物のお世話をする以上、長期のお休みをとることは難しいのが現状です。特に、収穫や出荷を行う12月~翌5月ごろは繁忙期とされています。
では、いちご農家の一年を栃木県のとある農家さんの例から見ていきましょう。

春~夏のいちご農家

春のいちご農家

春を迎え、4月~6月の時期には親株の定植(ていしょく)と子苗(こなえ)を増やす作業を行っていきます。いちごは野菜のように種から育てるのではなく、苗を増やして栽培するのが一般的。苗を増やす元になる株を「親株」と呼び、親株から伸びる「ランナー(子苗)」を増やしていきます。親株から最初に伸びた「ランナー(子苗)」を1次ランナー、または太郎苗と呼びます。1次ランナーから2次ランナー(次郎苗)、2次ランナーから3次ランナー(三郎苗)…といったように苗が伸び、成長させていきます。おおよそで1つの親株から約50本のランナーがとれるそうです。

夏のいちご農家

そこから7月~9月上旬の夏のシーズンに親株から伸びる子苗を切り離し、ポットと呼ばれる小型のプランターに植え替えて育苗していきます。この時に花となる芽が育つのを促すため、標高の高い冷地で育苗したり、クーラーや地下水を利用した夜冷育苗など寒さを感じさせる技術も使われたりしています。これは上で述べた収穫時期を調整するためなんですね!

秋~冬のいちご農家

秋のいちご農家

9月中旬から10月にかけて、ポットに植えた苗をハウスに定植します。これが皆さんが思い浮かべやすいいちご狩りの光景ですね。そこから1ヶ月程度でハウスを覆うなどの温度調節や、根本をビニールで保護するマルチングを行うなど、順調に生育させるための管理を行っていきます。そして10月下旬ごろに咲いてきた花に向けてミツバチを放飼することで受粉がしやすい環境を整えます。この作業は、実はあのきれいな円錐形にするためにとても重要な作業なんですよ。

秋のいちご農家

冬のいちご農家

そして、開花から1ヶ月程度で実が大きくなり、赤く色づいて収穫の時期を迎えます。そこから日々収穫とそれに伴う調整作業が始まります。
これは翌年5月頃まで続き、並行してまた新しい親株から育てていくという流れです。

これらはあくまで簡単に説明しましたが、その他にもやるべきことは本当にたくさん!
長い期間をかけて農家さんはいちごと向き合って栽培を行っているのです。

いちご農家の苦悩・大変なこと

いちごは病気に弱い!?

いちご農家の大変なこと

いちごは非常に栽培が難しい作物と言われています。それは天候の変化と病気に弱いという点が主な理由です。
日照不足だと苗が弱く育ってしまい、逆に急な高温、強烈な日照はチップバーンと呼ばれる葉先やランナーの先が枯れてしまう症状が発生してしまう恐れがあります。
またいちごの実は土に触れてしまうと病気(うどんこ病)になりやすいため、土に触れないように育てる必要があります。
加えてアブラムシも天敵です。そして夏の暑さに弱く、乾燥に弱く、冬でも水やりが必要、肥料が実につかないよう気を配るなど、気にかけることは山ほどあります。

こうしてみるといちごは天敵だらけ!栽培が難しいと言われるのも頷けますね。

出荷はとっても大変!

天敵はなにも難しい栽培だけではありません。いちごの出荷作業において大きなウエイトを占めるのが手作業でのパック詰め。ピーク時には1日約5000パックの出荷調整作業を行っています。
大きさや重さを一瞬で見極め、バランスよくパックに配置していくことが求められるため、経験も求められます。慣れていないとたくさんの時間がかかってしまったり、せっかくのいちごがつぶれてしまうなんてことも。それ故にたくさん収穫したくてもパックに詰める作業の手が回らないため、収穫適期を逃しいちごの出荷ができないこともあるんだとか。せっかく収穫された美味しいいちごが、食卓に並ぶことができないなんてそんなひどい話はありません!

そのため期間限定のアルバイトを農家さんで募集していたり、各地のJAがパック詰め作業を一部代行しそちらで求人を出していたりなど、シーズン中はいちご農園での短期アルバイトの農業求人が増える傾向にあります。
いちご農園での農業求人一覧はこちら!

まとめ

一年間という長い期間をかけ、農家さんはいちごを管理・調整し、大切に育てています。食べてしまう時は一瞬ですが、そこには非常に多くの手間と工夫が不可欠です。 しかしこれはいちごのみに言えることではありません。多くの作物では収穫・出荷期に人手を必要としています。農業ジョブではこうした農家さんの採用のお手伝いをしております。大変な作業ですが、それと同時に自分の手で作物を収穫することは何にも代えがたい達成感がありますよ!
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よくある質問

いちご農家の年収は600万~900万円です。また、農林水産省の「品目別経営統計」(2007)をもとに計算すると、いちご農家の世帯農業所得率は52.8%と施設野菜の中ではトマトに次いで高く、比較的利益を上げやすい経営ができるでしょう。

収穫や出荷を行う12月~翌5月ごろが繁忙期とされています。この時期は、期間限定のアルバイトを農家さんで募集していたり、各地のJAがパック詰め作業を一部代行しそちらで求人を出していたりなど、求人が増える傾向にあります。

農林水産省のデータをもとに、いちご農家の一人当たりの年間労働時間は1874時間と考えられます。平均的な年間労働時間である1607時間と比較すると、いちご農家のお仕事は忙しいと言えるでしょう。

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この記事を書いた人

  • 農業ジョブ 編集部
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