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衆議院議員 平将明氏からのメッセージ

日本の空港が国際食品市場(いちば)になればいい!青果仲卸業出身の政治家が独自の視点で見る農業ビジネスの近未来像とは

衆議院議員 平将明

東京都出身 自由民主党所属。
早稲田大学法学部卒。サラリーマン生活を経て、家業である大田青果市場の仲卸『山邦』に入社。3代目として後を継ぎ、1996年社長就任。2005年、東京都第4選挙区にて初当選し政治家に。経済産業部会長、衆議院決算行政監視委員会理事、経済産業大臣政務官、内閣府副大臣、行政改革推進本部 副本部長などを歴任。

「農地の流動化」と「担い手の多様化」

――本日はよろしくお願いいたします。日本の農業の近年の動きや課題、そして今後向かうべき方向、その辺りについて政治とビジネスの両方の観点を絡めてお話を伺いたいと思います。

平:本質的には「農地の流動化」と「担い手の多様化」ですよね。これらに関しては政治も国家戦略特区などを活用して後押しをしてきました。

次に、いかに儲けるのかという事になれば「大規模化してコストを下げる」と「高付加価値化して儲ける」の二つの手法があるわけですが、いずれにしても国内の人口が減っていく中で農産物の需要を増やさなければいけない。

だから今後は外需の獲得がものすごく大事になってきます。

「海外需要を取り込む」には流通がカギになる

――それは農産物の輸出を伸ばしていくという事なのでしょうか。

平:私は過去に大田市場の青果仲卸を経営していたので、議員の中でも農産物流通には詳しい方だと思います。農産物の外需獲得には2パターンあります。単純に輸出拡大というやり方もあるし、外需を国内経済にビルトイン(※built-in : 内蔵する)するという新しい方法も考えられます。

例えば、日本国内の主要な国際空港と卸売市場の機能を連結させます。そのような特別な役割を果たす市場では世界各国のバイヤーの参入を可能にし、彼らが農産物を買い付けて自国へ持っていけるようなシステムがあれば、なにも各々の産地が輸出に向けて取り組まなくてもよくなります。

今ある既存の流通の仕組みの中に外需をビルトインするだけでも随分と農業界の景色が変わるでしょう。

農産物流通の成功の肝はいかにして廃棄ロスを減らすかということです。産地が直接輸出に取り組む場合はここが問題になります。例えばイチゴ単品を5トン輸出するとしても、生食用の場合、瞬時に売り捌かなければ腐ってロスになってしまい、受け入れる側も困ってしまいます。市場流通をかませることでロスを合理的にコントロールすることが大事になってくるわけです。

外需の取り込みについて

――そういった国際空港直結の卸売市場のようなものが近い将来に実現するんでしょうか。

平:今述べたのは一つのアイデアで、農水省に宿題を出しているところです。外需の取り込みについては様々なやり方の研究をしている段階です。

日本米の輸出も可能性はあるでしょう。今10万円前後の高機能炊飯器が外国人観光客の方々に人気のようです。アジア、アセアンの方々が豊かになってきて日本式の炊飯の文化にも入ってきたわけです。

でもその炊飯器で調理するに相応しい米って、きっと日本のブランド米ですよね。それなのに最高品質の日本米でも、例えば中華人民共和国には輸出する際は燻蒸が義務づけられていて、大変な制約要因になっています。

どんなカタチであれ、いざ農産物を輸出するとなればそれは必ず国家間の通商交渉や検疫の制度などの調整をすることになります。そこはもう民間ではどうにもなりません。どうやったって政治でしか解決できないわけです。

そのためには政府に農産物輸出促進の強力な司令塔を設置し、いつまでにどの国にどの農産物を輸出できるよう目指すかという綿密な工程表を作成する必要があると思います。その準備は進めておきましょうという、今はその段階です。

海外需要がもたらす、農業の秘めた可能性

――将来海外の需要を取り込めた場合、日本の農業はポジティブに変化するのでしょうか。

平:農産物は国内マーケットだけをターゲットにしていると豊作になると値段が落ちてしまうのですが、ストレスなく外需を取り込めれば値段が落ちなくなるどころか、単価が上がり量も売れるようになります。そのためにも世界標準よりも高付加価値なものを作る必要ありますが、農業は一気に儲かるスパイラルに突入する可能性を秘めています。

儲かる農業に人材が集まる仕組みを

――弊社のメインの事業範囲でもあるのですが、農業における人材についてはどのように考えておられますか。

平:単刀直入に述べると、農業の人材獲得の一番のポイントも「本当にその農業は儲かるのかどうか」なのだと思います。儲からないのに無理矢理「跡を継ぎなさい!&補助金あげるから!」という政策はもうナンセンスです。

今は中間流通を抜いてコストをいかに下げ、農家の手取りを増やすかという議論ばかりしていますが、繰り返しになりますが、私は新たな需要(外需)の獲得と高付加価値化だと思います。

そこに今後は自動化の流れが加わってきます。2018年には準天頂衛星システムが稼働してGPSの誤差が数センチになるので、今後は農業分野での機械化や自動化も、さらに発達してくるでしょう。自動走行で種まきや収穫をし、ドローンが農薬を散布するイメージです。

日本の農業が置かれている状況と今後について

――農業を志す方々が今後、アジアのマーケットを意識しながら儲かる農業を模索する時、どのような事に注目していると良いとお考えですか。

平:EUについて考えてみてください。EUではオランダは農業、ノルウェーは漁業、ドイツは工業、イタリアはデザイン、フランスは観光、と言った具合に其々が得意分野でやっている。

日本は今まではトヨタに代表されるように工業製品を輸出してやってきたところがあるからドイツ的だったとも言えるのですが、現在の日本がアジアで置かれている状況はどんなでしょう。

これから日本はEUよりもはるかに大きなアジアのマーケットの中で、EUにおけるオランダにもなれるし、ノルウェーにもなれるし、イタリアにもなれるし、フランスにもなれるポテンシャルを持っています。アジアが発展して経済的に豊かになってきた事でそれができる状況になった。

地方創生担当の内閣府副大臣として政策を担当した立場から言うと、それをやっていきましょうっていうのが今の政府の地方創生の戦略だから、農業だって間違いなくさらに良い方向に進んでいくし、ビジネスチャンスは東京だけじゃなくてきっと地方にあると思います。

チャンスはものすごいいっぱいあるし農業は儲かると思いますよ。

2016年12月9日 平将明事務所にて

インタビュアー:株式会社 Life Lab 代表取締役 西田裕紀

2006 年に株式会社 Life Lab を設立して以来、農林水産業の人材分野で事業展開。同社の運営する「農業ジョブ」は農業求人情報サイトとして国内最大級まで成長。「未来の農業を創る」という理念のもと、今後もより一層農林水産業界への貢献度を高める。

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タグ: インタビュー
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