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農業を志す学生に向けた秋元里奈氏からのメッセージ

課題が山積みのところっていうのは伸び代がたくさんある業界と思っています

産直EC「食べチョク」代表 秋元 里奈

神奈川県の野菜農家に生まれる。 慶應義塾大学を卒業後、2013年にDeNAへ新卒入社し、新規事業の立ち上げやマーケティング責任者などを経験。
2016年11月にビビッドガーデンを創業し、 2017年8月にこだわり生産者が集うオンライン直売所「食べチョク」を正式リリース。
3年で認知度/利用率No.1の産直通販サイトに成長。2020年4月にアジアを代表する30歳未満の30人 「Forbes 30 Under 30 Asia」に選出。
TBSの報道番組「Nスタ」の水曜レギュラーコメンテーター、日本テレビ「スッキリ」コメンテーター、フジテレビ系列「セブンルール」、テレビ東京「カンブリア宮殿」など出演。

01:食べチョクとは

私就活してた時、すごく迷ってどこの会社に行きたいか分からないっていうので、もう説明会にすら行きたくないほとんど家にいたんですね。

本当にいろんな企業があるので、それこそ食・農業という業界を決めてても、すごい迷うと思いますし、むしろ他の業界も入れると何を軸に選んだらいいのか、企業って無数にあるので分からなくなると思うんですけど、人生って選択の連続だと思ってます。
選択を重ねていって、結局人生というか自分のキャリアだったりができていくという意味でいうと今、皆さんがこれから選ぼうとしている企業ファーストキャリアは、すごい重要な選択の一つだと思います。

私自身、元々全く起業する気持ちはなくて、食とか農業にも当時就活のとき興味がなくて、全く別の業界を受けてたんですけれども、実は最初のこういった説明会の出会いの場で、DeNAの南場智子さんという創業者の方にお会いをして、そこで感銘を受けてですね全然関係のないDeNAに飛び込んで、結果としてそこで起業家マインドが育って、今は離れて事業をしているんですけど、最初に選んだ道次第で本当にこの後の就活のキャリア…人生のキャリアというのは決まっていくと思ってます。

なので今、皆さんがすごい大きな選択のタイミングにいると思っています。
凄い迷うと思うんですけど、基本的にもう選んだ道というのは、戻れないので選んだ道を正解にするしかないかなと思ってます。
そういう意味でいうと、沢山いろんな情報を得て、もう選択したことを納得できるかどうかっていうところに尽きるかなと思っています。
今、私たち食べチョクというサービス5年やってまして、まだまだ若い企業なんですけれども、農業の農業だったり、水産・畜産1次産業に従事する生産者さん向けのサービスとして、食べチョクというサービスをやっています。

食べチョクは、簡単に言うとオンラインの直売所のサービスで、皆さん地方行かれた時に道の駅とか直売所とか寄られたことある方も多いと思うんですけれども、農家さんが、自分で物を持ってきて自分で値付けをして、消費者の方に直販できるオンライン上のそういった直売所のサービスを運営しています。
買っているのは、本当に一般の主婦(夫)のお客さんで、スマホだったりとかPCで自分の好きな農家さんとか商品を検索して注文をすると、生産者さんが箱詰めして直接直送で送ってくれるそんなサービスを運営しています。
そもそも私が、何でこのサービスを始めたのかっていうところをちょっとお話しさせていただくと、元々実家が畑をやっていて農業をやってました。
中学校ぐらいまでおじいちゃんが、毎日畑に出てご飯は「大体その時畑で採れたものを食べる」みたいな生活をしていました。
そんな幼少期を過ごすんですが、中学校の時に実家の農業は結局廃業してしまいます。
なぜかというと、ずっと私達両親からですね「農業は継ぐな」 と言われて育ちました。
というのも、私達は、本当に小さい農家だったので、凄いこだわって生産をしていたのですけれども、正直収益の面では、あまり不安定というか、結構それだけで食べていくには厳しい収益だったので、ずっともうおじいちゃんの代からもう農業やらなくていいよという風にずっと言ってて、実際に中学になっておじいちゃん亡くなってやる人いなくなったタイミングで、実家の農業は廃業しています。

農業ってなかなかお金にならないんだなと思ってそのままやり過ごして、DeNAに行ったりとか、色々一旦農業からは離れた生活をしていたんですけれども、ふとある日実家の農業を実家の畑に行った時に、昔すごい綺麗に整理されていた畑が耕作放棄地になってしまっていて、すごく綺麗な畑だったはずが、耕作放棄地になってしまっているのを見た時に、何でお母さんは農業を継ぐなと言ったのかなというのを疑問に思いました。
当時私DeNAでレガシー業界のIT化みたいな新規事業をやっていて、きっと農業の業界でもまだまだ変えられることがあるはずだという思いから起業に至っています。
今私達がやっているのは、生産者さんの課題からスタートしているサービスです。
私の実家のような小規模な生産者さん、手間暇かけて丁寧に作ることはできるんだけれども、やはり量がそんなに採れなかったりとか、人が少なかったり、面積が少ないと機械化ができないので、労働どうしても一人当たりの生産量というのが少なくなってしまいます。
今、既存の流通ルートだとどうしても生産者さんっていうのは、売り値を自分で決められなくて、例えば人参1キロいくらですっていう風に言われたら、もうどんな味でも基本的には形の規格が特定であれば、同じ金額でしか買ってもらえないというのが既存の流通ルートです。
そうなると味にこだわるのではなくて、なるべくきれいな形のものを効率よくたくさん作った方が利益になるんですね。
ただ、なかなか小さい生産者さんだとそれが難しいので収益が上がらない。
結局小さい農家さんというのは、どんどんやめてしまってるという現状に当時気づきました。
生産者さんが他の選択肢を選べたりとか、既存の流通ルートにも出しつつ1割何か他の売り方をするみたいな選択肢がもっとあってもいいんじゃないか、というのが食べチョクのスタートになっています。
食べチョクは、生産者さんが自分で箱詰めしたりしなきゃいけないので、結構手間はかかる。
結構厳しい声をいただいたりとか結構大変ではあるんですけども、一方でちゃんと自分で値段を決められてかつ直送なので、利益率も高い。
直接自分の名前でファンが付くので、この生産者さんのトマトおいしいねという形で、ちゃんと指名でお客さんのファンが付くというころがメリットとして新しい選択肢としてスタートをしています。
結構大切にしているのは、私たちはあくまでも「小さい農家さんが売れ続けること」っていうのをすごく意識しているので、基本的には小さい農家さんでも評価されたりとか、熱量の高いファンの人がいれば、そういう生産の規模の大小も関係なくしっかり売れる場を作っていくというのが、食べチョクのポリシーとして考えています。

02:私たちから見る食業界

私達のビジネスを通して、今、食業界全体も変化トレンドというところを次でお話ししたいなと思います。
私達実は、コロナ禍で大きな変化があったサービスなので、どういった変化があったのかというところを最初にお話しします。
コロナが最初、2020年3月来て学校給食が小中高で中止になったり、後、イベントができなくなったりしてリアルの場っていうのがパッと閉じたのが2020年の3月です。
で、そのタイミングでいろんな生産者さんから全国各地からSOSの連絡が来ました。
イベントで使う予定だったカキが8000個余ってしまってますとかですね。
給食学校給食に出す予定だった野菜が、もう畑に大量にあるんですけれども売り先がありませんみたいな話がたくさん寄せられました。

品質が高い人ほどちゃんと自分で販路開拓して外食とか給食に売り込んで、それで契約を取っていてそれが正解とされていたんですね。
私が食べチョク出してくださいっていう風にお願いしても、結構お断りをされることが当時多くて、すごい品質高い人ってやっぱりそういうところに出すんだなって思ってたんですけど、そういった人たちからまさにすごいSOSが来ました。
こんなに品質が高い人たちが売上0になって、しかもちょっと先がわからないとなってしまうとこれから廃業する人がすごい出ちゃうんじゃないかっていう危機感がありました。
コロナ禍色々大変なこと多かったんですけれども、ピンチはチャンスという言葉がすごくぴったりくるけれども、結果みんな生産者さんもすごく必死に頑張っていて、私たちも一緒にやってきたのですが、結果として振り返るとそこで得た学びで大きく成長していたり、それがきっかけでポジティブな業界の変化があったかなというふうには思ってます。

川上〜川下まで全領域で大きな変化チャンスがありますと書いてあるんですが、私達は生産の川上からは見ていますが、基本的には川下その流通して小売 届けるところをやっていますが、本当にどこの川上から川下まで全てにおいてかなり大きな今業界の変化が起きています。
まずちょっと流通の部分ですね元々は卸売市場に流してそこから細分化されて消費者に届くというのがメインの流通だったんですけれども、いわゆる直販生産者さんからの直販というところが市場としてはどんどん大きくなってきています。
2019年まででもう既に直売所が1兆円を超えています。これ2019年までなので、20年以降は恐らくもっと伸びていると思います。
少し入り口の部分のお話をしましたが、こちらはもうちょっと川下の方というか販売の部分ですね。
今買い方もどんどん変わってきていて、いわゆる食品とかってEC化率がすごい低い業界だったんですね。
例えば生活雑貨・生活家電とかは今も30%くらいECになっていて、書籍も30%から35%ぐらいですね。
なんですけど、食品に限ってでいうと3%くらいしかないというので、すごくいわゆる多くの人がリアルなスーパーで買ってるっていうのが食品業界です。
そもそもEC化率がまだまだ低いので伸びしろが大きくて、成長の角度がすごい高い領域。特にコロナの影響ですごくここは伸びていまして、生鮮食品とやっぱり生ものなので、どうしても最初オンラインで買うハードルがすごく高いんですね。
ちゃんと今も届くかなというのはわかんないので、これだけやはり便利な世の中で、ちょっと行けばすぐスーパーがあるという状態だと、いったん目で見て買った方が安心かなというのは、なかなかオンラインにスイッチがされないんですが、コロナの影響で、その家にいなきゃいけないっていう強制をされたというところで、生鮮オンラインで買う経験をした人がすごく増えました。
それによって意外とオンラインで買っても品質がいい物届くんだなっていう成功体験を積んだ人たちが引き続き使ってくれていて、つまりコロナ禍で初めてECの体験を買う体験をした人というのがたくさんいたので食品とかの領域のEC化率は2020年以降も増えていっています。
消費者の関心というのも変化が大きくあります。ほぼSDGSですね。
やはりこの数年ですごく聞くようになりました。皆さんも聞いたことあると思うんですけれども、消費者の方のSDGSに関する興味関心と認知がすごく大きく伸びています。

未利用魚って聞いたことありますかね。規格外野菜とか聞いたことあると思うんですけど、それのお魚版みたいな形で、捨てられて規格に沿わないで捨てられてしまうお魚を未利用魚というふうに言うんですけれども、この未利用魚というのも検索数は、これは去年のデータなんですけど、7月にちょっとテレビの影響で跳ねてからそこから結構ベースが高くなって、10月〜11月がすごく検索数は上がっていてます。
今までは捨てられてしまっていたというのを活用しようっていう消費者の方の意識が表れている部分かなと思っていて、なので今までみたいに単純に綺麗な商品とか並んでいる商品から選ぶという形だけではなくて、自分でそういうちょっとフードロスじゃないんですけど、削減のために何かこう規格外とか、捨てられてしまっているものを買えないかなっていうニーズと動きが出てきているというのが検索結果からもわかるかなと思ってます。

いろんな消費者のトレンドがある中で、売る側の変化として何社か企業の紹介をしたいなと思います。
私のDeNAの先輩が立ち上げたサービスです。
ここは、オンラインオフラインというところをうまく使って事業を伸ばしてきている企業さんで、完全栄養食のパンっていうのを作っていて、そのパンを食べるだけで1食分の栄養が賄えますっていうものをプロダクトとしてやっているんですけど、すごくコンビニに置かれて流通が伸びたっていうのを聞いてたので、てっきりコンビニですごい売り上げが上がっているのかなという風に思ったんですが、コンビニとかで売ってるものなんですけど、その比率は30%くらいで、それ以外が自社ECつまり自社のECサービスで購入をされているというところです。

コンビニさんとかに置いてもらうと凄い売り上げが上がって、でもやっぱりその分、コンビニさんにも手数料が取られちゃうんですけど、認知が拡大する以上終了だったところからそこの認知拡大を活かして、自社の通販に流してそっちの方で売り上げを立てていく。
で、かつそっちの比率の方が大きくなっているというすごい面白い事例だなという風に思っています。
ただのパン屋かもしれないんですけれども、そこから健康軸でしっかりコンビニに刺さってコンビニでちゃんと認知を拡大して自社のECに流してサブスクへと。
定期便で収益を上げていくっていうビジネスモデルが確立したすごく良い事例かなというところで持ってきました。

もう一つ消費者の方のタイムパフォーマンスを重視する動きっていうのが、最近消費者の方の中で大きなトレンドとして挙げられています。
簡単にいうと、時短いかに短い時間で最大の効果を得るか。
今までだとコストパフォーマンスってコスパ。コストに対してのそのリターンだったんですけれども、時間ですね。
タイムに対してどれだけ情報を得られるかというところがすごく重視されています。
今、消費者のトレンドが健康軸だったりとか時短・タイパを意識した軸というところに流れてきているので、本当にどんどんどんどんトレンドで変化していくものなので、そこに合わせて商品を開発していかなきゃいけないですし、今人気の商品も5年後には続いてるか分からないので、とにかく新しい商品開発をし続けることが大事なのかなというのが事例としてわかるかなと思います。

川上から川下まで本当に色んな変化があります。
特に大きな共通しているポイントとしてはデジタル化ですね。
IT化が進んでいってるので、今までずっと何10年も変わっていなかったところから、一気に業界が変わる可能性があるという意味だとすごい大きなチャンスがあるタイミングなのかなという風に思ってます。

03:就活中の皆さんへのメッセージ

この業界凄く大変なことも多くて、特に農業とかですと、私が元々この業界に入った理由の一つでもありますが、担い手不足。
どんどんどんどん農家さんの数は減っていて、高齢化が進んでいます。
特に近年に関してはそこに更に生産コストだったりとかが上がってしまっていて、前より例えば餌代だったりとか、飼料・肥料あと資材とか本当にありとあらゆる価格が上がっているので、そこのこの減少に拍車を掛けてしまうんじゃないかというのを私自身もすごく危惧をしています。
生産者さんの値段が上がるとそれを買うメーカーさんも今どんどん値上げをしていってて、皆さんの普段買われてるものとかでも値上げしているものが出てきていると思うんですけど、昨年は特にその動きが顕著に出ていて、多分今年もまだ続くという風に言われています。

この食品の業界というのはだいぶ数年厳しい局面が続くかなという風に思っているんですけど、私自身がその中で起業しているのもあって、私課題が山積みのところっていうのは伸び代がたくさんある業界かなという風に思っています。
私自身、今起業して6年経っているんですけど、やっぱりこの業界がすごい面白いなと思うのが、本当に解決しなきゃいけない課題がいっぱいあるので、課題に困ることがないというのはすごい嬉しいことだなと思ってます。

実はDeNAの時に新規事業を考えるにあたって、課題を見つけるのって結構難しいんですよね。
ここの課題解決しなきゃいけない課題なんだろうっていうのを探そうって難しいんですけど、本当に解決しなきゃいけない課題いっぱいあるので、逆に言うとやれることがいっぱいある業界だと思っています。
今日すごい色んな企業さんが出展されていて、私もすごい聞いてみたいなと思う企業さんたくさんあったんですけれども、本当にどこの領域でも川上から川下まで今大きな変化が来ているので、ぜひその対象を絞らずにいろんな企業さんの話を聞いていただきたいなと思います。

今、皆さんがいるタイミングっていうのは、本当にこれから先の人生を決める上ですごく重要な意思決定のタイミングだと思ってます。
正直領域は自分の興味ある領域だったらどこでもいいのかなと思ってて、やっぱりその中で何をするかがすごい重要だなと思っています。
どの企業さんに行っても、その中でちゃんと自分自身が誰かに言われたことをやるんじゃなくて、頭で考えてやってみて失敗するかもしれないけど、そこからちゃんとフィードバックを得て次につなげていく。
このサイクルを何回回せたかで成長が決まると思っているので、ぜひそういう熱量を燃やせる企業さんを見つけて、それがその中で自分がここだったらたくさんチャレンジできそうだなというところを見つけてそこに進んでいって欲しいなと思っています。

やはりいろいろ選択肢があるので、最終的にはすごい迷うと思います。
もうAかBか。Aを選んだらBが正解だったかとか分からないので、とにかくAを選んだってことを正解にするしかないです。
なので、とにかく選ぶ瞬間に後悔しないぐらいめちゃくちゃ悩むことが大事だなと思っているので、なるべく今のタイミングってすごく色々な情報が入って入手できるタイミングだと思うので、この機会にいろんな情報を得て最後後悔のない意思決定ができるように皆さん、今日もいろんなお話を聞いていただけたらなと思ってます。

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