農業を志す学生に向けた安倍晋三氏からのメッセージ
日本の農業は世界的に質も生産力もトップレベルのものがあると思います
元内閣総理大臣 衆議院議員 安倍晋三
東京都出身(本籍山口県)
1993年衆議院議員に初当選。2003年自由民主党幹事長、2005年第3次小泉内閣官房長官を経て2006年戦後生まれ初の内閣総理大臣(第90代)に就任するが2007年第一次安倍内閣総辞職。
2012年自由民主党総裁として衆議院総選挙で圧勝して再度、内閣総理大臣(第96代)となる。2014年衆議院を解散し、総選挙で再び圧勝。第97代内閣総理大臣に就任して第3次安倍内閣を組閣。
2020年健康問題を理由に辞任。在任期間は第一次安倍内閣を含めて3188日と憲政史上最長。
今日は、農業界に入ろうという若い皆さんが集まるということで出席をさせていただきました。
日本の農業の生産性はだんだん上がってきている
農業の総生産額というのは、かつて11.5兆円あったんですが、今9.3兆円まで落ちています。
また、生産農業所得というコストを引いた農業全体の収入所得の面からいっても、これもかつては4.8兆円だったものが3.8兆円に落ちてこれはBADニュース風なんですが、GOODニュースはですね。実は総農業生産額も、一時は11.5が8兆円まで落ちたのが、また今回9.3兆円まで回復をしてきて19年間で最も高い水準になっている。
生産農業所得もですね。実はこれ2兆円台まで下がったんです。
5兆円から2兆円台まで下がったものが、3.8兆円まで回復をして。そしてこれもこの20年間で最も高い水準になって。と同時にですね。農業者の数は、今のが平成2年から比べているんですが、平成2年は400万人だった農業人口も、今、半分の200万人に減っています。
200万人まで減ってしまったということは、残念なことなんですが、今の数字で見てみれば一人当たりの総生産額も生産農業所得も相当増えている。
つまり生産性はだんだん上がってきている。また、一人当たりの収入も増えてきているということでありますからこの傾向、今の方向をしっかりと守っていけば、まさに皆さんあって未来もあると。
日本の農業というのは、意外と世界でも力があるんだなと再認識しました。
農林水産業全般においても、農林水産業のGDPは第8位ですし、農業だけでいけばもっと順位が上がっていくということにもなります。
ですから、この力をですね。もっともっと生かしていかなければいけないと思いますし。
もともと農家の皆さん大変真面目ですから一生懸命汗を流していいものをつくります。質の高いものを作る。でも、それをですね。どこにどう売れば高く売れるか。どうやって販路を広げていくか。
あるいは、どうやって輸出をしていくかということは、考えて余り来なかったのが事実であります。
考えてこなかったということは、そこにもっともっと大きな可能性が広がっているんだなと。
世界的には、その質においても生産力においても、やはりこれは、トップレベルのものがあるんだろうなと思います。
農業の評価は間違いなく上がっていく
農業の社会的評価。これはやっぱり守るという分野であってはですね。評価は上がっていかない。もちろん守る必要はあると思いますよ。
多面的な機能がありますからね。水を涵養し、環境を守り、自然を維持していく。
そして、日本の文化と伝統のまさにこれは基盤でもある。農は国の基(もとい)でもあります。
しかし、同時にですね。そこに行って自分たちの力で未来を切り拓いていくことができる分野となって、初めて魅力を持ってくる。
魅力を持つことによって、社会的な評価は上がっていくんだろうなと思います。
今日もこんなに若い皆さんにたくさん集まっていただいていること。
私も初めてこの説明会。特に農業でですね来て、大変驚いていますが、こうやって皆さんが集まってきてどんどん農業の評価は間違いなく上がっていく。
評価を上げていくためにもやはり労働環境を良くしていく。そして、それぞれの収入が上がっていく。
あるいは果たしている役割をもっと多くの皆さんに知っていただき、新しく環境を維持し、持続可能な社会にしていく上において農業がいかに大切かということも、皆さんにもっともっと広めていただきたいと思います。
若い皆さんの力が新しい発想 皆さんに生かしていただきたいなと思います
今、ライフスタイルも価値観も随分変わりましたよね。
特にこのコロナでですねやっぱり地方で住む価値が見直しをされていると思います。
地方には美しい自然もありますし、豊かな人生を歩む上においては、都会の真ん中あるいは周辺に住むよりもリモートなんかも活用すれば地方がいいねということにもなってくる。
実はこの10年間でですね、東京から地方に移住する移住相談の窓口があるんですが、その移住相談の窓口に来る人の数が10倍に増えました。
もう一つはですね。10年前はですね。移住相談に来る人の半数以上は、これは60代以上だったんですね。
会社もそろそろ退職して年金生活に入ったらですね、生まれ育った地元に帰ろうかなという人だったんですね。今どうなっているか。9割はですね50代以下なんですね。
つまり地方にチャンスがある。あるいは地方に住んだ方が、自分の人生や家族の人生豊かになるんではないのかな。
こういう大きな変化の中においてですね。地方がしっかりとしていくこと。農業を支えていく上においても大きいですから、その価値観が随分変わっていくということはですね。
いわば農業という職業に対する認識も変わってくるのではないのかなと思いますね。今、大きな変わり目ですから大きな変わり目にあるときこそですね。
若い皆さんの力が新しい発想、私の持っていない発想をですね、皆さんに生かしていただきたいなと思います。
間違いなく日本は世界の中でも飛び抜けた農業大国になっていく
コロナで輸出額減ってるんですが、全体の農業の輸出はですね。増やすことができたんですから。
コロナ禍を何とか克服すれば、さらに大きな未来を切り開いていくことができるのかなと思います。
ですから、その中で皆さんが若い新しい発想で自分たちで農業を変えていく。
その意思を持って頑張っていただきたい。
間違いなく、日本は世界の中でも飛び抜けた農業大国になっていく。
しかも、美味しくて安全で質の高い、健康にもいい。
そういう農産物を世界に輸出する国になっていくということを私は期待をしています。
日本よりも面積の全然小さいオランダがですね。これは、まさにハイテクを活用して世界第2位の輸出大国になっているんです。私も現地視察をいたしました。
皆さんの力を大いに期待しています。
また、日本もこれからもまさに世界の真ん中で輝く国になっていく十分にその可能性があります。
それはまさに若い皆さんにかかっていると思います。大いに期待しています。