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新米と古米の違い

秋頃に新米が市場に出回るが、いつまで新米と呼ばれるのか?

誰しも一度はスーパーで見かけたことがある「新米」の二文字。
秋頃になるとあちこちのスーパーで新米のフェアが組まれることもしばしばで、新米を口にしたり、新米は「美味しいお米」と認識している人も多いのではないでしょうか。確かに、あのつややかな光沢はたまりませんよね。
では本当に「新米」は美味しいのでしょうか?そもそも新米って何?反対に「古米」は美味しくないの?といったお米の「旬」にまつわる疑問を解決していきます!

そもそも「新米」とは?

「新米」と表示することは本当はできない!?

本来、食品表示法の規定基準により「新米」として表記することは原則できません。
ですが、以下の2点を抑えることで、例外的に「新米」と名乗ることができます。

【1】原料玄米が生産された当該年の12月31日までに容器に入れられ、若しくは包装された玄米
【2】原料玄米が生産された当該年の12月31日までに精白され、容器に入れられ、若しくは包装された精米

つまり、お米が収穫されたその年の12月31日までに袋詰めされた玄米や白米だけが「新米」として認められるのです。
そして無事新米と認められたお米は、「新米」のシールを付けて市場に出回ります。
この新米シールにもいくつか種類があり、純粋に新米100%に付けられる「新米シール」、新米が50%以上の割合でブレンドしてある「新米入りシール」、そして50%以下の割合でブレンドされている「新米30%シール」です。

このほかにも、米穀年度で新米を定義する方法もあります。
「米穀年度」とは1995年まで施行されていた食糧管理法という法律の中で扱われていた概念で、お米の収穫時期に合わせた年度表示となります。ひとつの年度の区切りは11月1日~翌年の10月31日までとされていて、現在ではお米の流通に用いられています。
この米穀年度を基準に新米とするならば、2020年の新米は前年の2019年11月1日~2020年10月31日までに収穫された米が2020年度の新米、となるわけです。

新米は本当に美味しいの?

まさにお米の旬を詰め込んだ新米。そんな新米が美味しいのは当たり前…とは思ってしまいますが、実際に新米は美味しいのでしょうか。
ここでは新米が本当に美味しいのか、実際私たちはお米のなにを美味しいと感じているのかを考えていきます。
美味しいお米、といったらどんなお米を思い浮かべるでしょうか。
炊き立ての米の艶や香り、口に含んだ際の米粒の感覚や歯ごたえ、そして噛んだ時に感じる米の旨味…人それぞれ感じ方はあるかとは思いますが、実はお米の成分にその秘密があるんです。
お米の主な成分は水分、でんぷん、たんぱく質、脂質、ミネラルの5つで、これらが一定の数値でバランスよく配合されていると美味しいといわれています。
そしてこのうちのでんぷんが美味しさを左右するカギを握っています。それはアミロースとアミロペクチン、この2種類のでんぷんなのです。

上記のグラフのように2つの要素の比率がお米の粘り気の決め手ともいえ、アミロペクチンが多いお米は粘り気があって程よい歯ごたえがありますが、アミロースが多い場合は硬く、パサパサしているのです。勿論、この二つのバランスが極端では美味しいと感じられませんが、アミロースの含有量が低いほど良い食味とされています。
そしてこのアミロースは、稲の育つ時の気温と日射量で含有量が決まります。気温が高温かつ日射量が多いとき、アミロースの含有量が低くなり、良食味の米ができるのです。

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「古米」はいつから古米なの?

新米じゃない≠古米

新米のことはわかりましたが、では古米とはどのようなお米なのでしょうか。
果たして、新米の時期を過ぎたら古米になってしまうのでしょうか?
これはそうでないと言えます。何故ならあくまで「新米」の表示は食品表示法に則った形になるので、ただ単純に「新米」シールが貼っていないだけで、2020年にとれたお米も2021年の1月から販売されているからです。
また別の基準として、お米の業界では流通には米穀年度を使用していることが多いため、収穫した翌年の11月1日から古米とみなされることもあります。
そもそも古米とは収穫時期から1年経ったものを呼んでおり、収穫から2年経てば「古古米」、3年経てば「古古々米」と呼ばれます。そう、収穫年から年を重ねる度に「古」という文字が増えていくのです。ちょっと面白いですよね。
ちなみにお米自体には賞味期限が設けられていません。何故なら野菜等と「同じ生鮮食品」であるからです。
これにより食品表示法では賞味期限・消費期限を書かなくて良いようになっているのです。ですがお米の場合は精米月日を書くようになっているので、これで精米からどれくらい経っているかを知ることができます。
ただし、何種類かのお米を混ぜてパッキングしているブレンド米もあり、この場合は見分けることはできません。
ではどうやって購入したお米の鮮度を知ることができるでしょうか?
それはずばりお米の水分量に注目することです。
まず、乾いた状態で炊く前のお米に手を付けてみます。新米は水分量が多いので手につくことが多いのですが、古米は水分量が少ないのでパラパラとしているのです。さらにお米の酸化が進んでいると白い粉が付くことがあるようです。

古米の美味しい食べ方

では気になっていた美味しさですが、古米はやはり美味しくないのでしょうか?
新米と比べてどんな炊き上がりになるのか、古米の特徴や美味しく食べる方法などを紹介していきます!

まず古米のおいしさですが、最近はお米の管理方法がしっかりしているため、新米とほとんど変わらない状態で食べることができます。
米の鮮度は水分量に比例しており、お米が呼吸をしない温度で保管することで、より鮮度を保った状態にすることができるのです。長く美味しく食べられるのはやはりうれしいですよね。
ですが、自宅などのあまり保管環境の整っていないところでの古米はどうでしょうか。
もしかすると、古米の特徴が徐々に出始めるかもしれません。
古米の特徴とは、水分量の少なさゆえに普通に炊くと硬くなってしまうことや特有の香りが風味を邪魔してしまうこと、劣化が進んでいると酸味がお米から感じられてしまうことです。
そうなる前に食べきってしまうのが得策と言えます。大体は購入して春~夏は2週間~1か月、秋~冬は2か月程度で食べきるのが理想とされています。

そんな古米ですが、新米よりも使い勝手のいい時があるのです。
例えば水分を含まないからこそ、多く水分を吸うため、量のある炊き上がりになったり、寿司の酢飯作りに役立つことがあります。
逆にパラパラさをいかしたことでチャーハンや、カレーライスといった濃いめのお料理には新米よりも美味しく食べられるのです。
また、新米よりも古米のほうが、正確に言うと収穫した後に少し寝かせたお米のほうが美味しい、と言われることもあります。
というのも、新米は水気が多くて寝かしたほうが適度に水分が抜けて美味しくなる、とのこと。
そういう場合は年明け~2月くらいの時期が狙い目なんだそう。
お米や個人の好みのもよりますが、好みの「抜け具合」がわかったらより一層お米が美味しく食べられそうですよね。

そして最後に、古米を美味しく炊く方法。
以下2点に気を付けるだけで、美味しく炊けるようになります。
1つめは、力を入れて少し強めの力加減で研ぐことです。もちろん、力任せにしてしまうとお米が傷ついてしまうのでお米同士を擦り付けるようなイメージで洗うと、古米のヌカが取れ、匂いの軽減に役立ちます。
2つめは、水加減です。古米は水分量が少ない、ということは水は気持ちメモリより多めに入れることで美味しく炊き上げることができます。
因みに新米は全くの反対で、さっと研いでメモリより気持ち少なめに水を入れることが炊き上げのコツです!

新米を直接買おう!

多様化する米の販売経路

家でお米を食べるとき、皆さんはお米をどこで買っていますか?
多くの方がスーパーにて購入されているかと思います。実際に過半数の方がスーパーで購入しているというデータもあり、やはり生活の一部として寄りやすいスーパーは流通経路として大きい存在である事がわかります。 確かに、現物を見る安心感と、すぐに持ち帰れるのは大きなメリットです。ですが、重いお米を運ぶのはやはり大変…。
そこでお米を購入する方法としてネット通販があります。
ネット通販の良い点は、何より重いお米を運ぶ手間がないことですよね。そして、多くの選択肢の中からこだわりの商品が見つけられることです。
反対に、デメリットとしては届くまでのタイムラグが発生してしまうことや、送料が負担になる場合が多いこと、現物確認ができないことがいえます。
ですが、幅広い選択肢と重い米袋を持って帰らずに済むのは大きいですよね。
ネット通販にも種類があるので紹介します。

1.近くのお米屋さんの通販ページから購入をする

まず初めに配達してくれるお米屋さんを検索する方法があります。
所在地や連絡先、配達の条件や宅配の場合の送料等を確認してわからなければ直接問い合わせることができます。
また、近くであれば直接出向いて商品を確認することができます。

2.お取り寄せサイトから購入する

複数の農家さんが登録しているような通販サイトから購入する方法です。
これによって手続きの複雑さは無く、また多数通販サイトも存在するため、産地など自分の好みにあっているサイトを利用することができます。

3.農家さんの個人HPから直接購入する

農家さんによっては、個人で運営しているホームページから購入することもできます。
それぞれの農家さんのこだわりや、どんな人が作っているのかわかること、店頭ではあまり見かけない品種のお米に出会うことができるかもしれません。
ただし、個人間のやり取りになるため慎重さや、トラブルになった場合の対応能力が必要となります。

最近では、上記の2をアプリにして、より簡単に生産者と繋がって手軽に購入できるサービスも広がっています。

稲作農家の自然農法

稲作農法は、生産者によって多様な形を見せています。
一般的なやり方は農薬を使った稲作農法。一番身近で一般的な農法ですが、最近は無農薬・減農薬、といった環境や食の安全に目を向けられる機会も多くあります。では、無農薬や減農薬栽培に挑戦している農家さんは、どのような農法を用いているのでしょうか。

無農薬農法としては一般的な「合鴨農法」を取り上げます。
合鴨農法は無農薬農法として1996年頃から注目され始めました。
これは合鴨の性質によって農薬を使わずに稲作ができるというものです。
合鴨を水田に放すことによる効用としては次のことが挙げられます。

除草剤が不要

合鴨が雑草など必要のない草を食べてくれます。稲は自分よりも背が高く、硬いため口をつけないのです。

害虫駆除の不要

合鴨が餌として虫を食べてくれます。

中耕作業

合鴨が水田を泳ぎ回ることで泥水がかき回されて、酸素の供給や、水中温度が高くなることによる成長促進が見込めます。また、虫取りの際に根元をつつくため、稲の株張りが良くなります。

肥料の供給

合鴨の排泄によって土が肥えて土壌が良くなります。

こう聞くと、農薬の手間の削減や鴨による作業のみで利点が多そうに見えますが、その裏では鴨の管理や鴨のための防御ネットの設置、満遍なく手入れしてもらえるような誘導など、安心安全な米作りのために労力を費やしているのです。
また、鴨はその後の処分等も考えなくてはならないため、農家によっては飼育から処分まで採算が取れず、泣く泣く無農薬栽培を諦めることもあるのです。
このほかに鴨では無く鯉を使ったコイ農法が無農薬栽培では用いられます。

減農薬栽培としては「レンゲ農法」が良く用いられているようです。
これは秋に種まきをし、冬の間に育てて春に花を咲かせたレンゲを、土にすきこんで肥料にする農法です。
土壌を強くする農法であり、この秘密はレンゲの根が空気中の窒素を取り込んでいることにあります。
こうしてしっかりと貯めこまれた養分を土にすきこむことで化学肥料の必要のない、強い土壌となるのです。
減農薬栽培ではここで農薬を撒くタイミングになります。
例えば、田植えの際に病気や害虫除けとなる「育苗箱試薬」と田植え時の除草剤の二種類を一度ずつ散布します。
これは通常の農薬散布量の50%以下になります。
勿論レンゲ農法でも無農薬栽培や、そのままの環境をいかして作る自然栽培を行うことができます。

私たちの口に入るまで、安心と安全を心がけている農家さんの存在は大きなものに思えますね。

まとめ

日本人の食に欠かせない存在のお米。今回はそんなお米の旬に迫って「新米」を徹底調査しました。
美味しいお米とはなんなのか、そのお米はどうやって作られて、私たちが手に取るまでにはどんな道筋があるのかを考えることで、いつもより一層、お米のおいしさやありがたさを感じることができるのではないでしょうか。

今回紹介した農法もまだまだこれだけではなく、稲作を始めとする農業では日々技術革新が行われています。
いつもと違う販売経路から購入してみたり、こだわって探していくと、これまでとは違った発見があるかもしれません。
通販サイトによっては5㎏を三種類など無理なく食べられる範囲で味比べをすることができるものありますので、興味がある方はぜひ食べ比べをしてみてはいかがでしょうか。

食農の安全性をしめす「GAP認証」とは

食品の安心・安全が求められる今日、
明確な規定に基づいた認証が重要!?

人の生活の基礎である「食」、そしてそれを支えている農業。安心安全かつ安定した食の供給のためには、より良い農業の追求が必須ですよね。その「より良い農業の追求」、そして「食の安全」ということを考えた時、GAP認証という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。

しかし、一口にGAP認証と言ってもASIAGAPやJGAPなどのほか、地方自治体で独自に設けている認証もあり、詳しく知っている!という方はあまり多くいらっしゃらないのではないのでしょうか?今回は、食と農業の持続性を高めるための取り組みであるGAP認証についてご紹介していきます。(アパレルブランドのGAPではありませんよ!)

GAP認証の概要

GAP認証とは?

GAPとは「Good Agricultural Practice:農業生産工程管理」という意味であり、食品の安全性や環境保全、労働安全などの持続可能性を確保するための枠組みを管理する取り組みです。近代農業で浮き彫りになっている環境問題や労働環境問題を解決していくために、食品安全・労働安全・環境保全の3つの柱を軸に構成されています。このGAP自体は、農場の規模や業態に関わらず全ての農業従事者が認識し、実践すべき行動を指しています。海外では、GAP規範という地域や環境に適した取り組みを明文化し、農家への補助金付与のための義務の1つとして実践を促進しています。それほど、GAPという本来あるべき農業を示した枠組みは大切なのです。
そのGAPを農場全体で実践し、より自社の安全性をアピールしたい!自分の農業経営を客観的に評価したい!と考えた企業が、審査を行っている認証機関に申込み、厳しい審査を超えた結果として得られる証こそがGAP認証です。

日本で取得可能なGAP認証には主に3つあります。日本国内での取り組みを見る「JGAP」、アジア圏での農業のあり方を見る「ASIAGAP」、そしてヨーロッパに端を発し世界120ヵ国以上で活用される「グローバルGAP」です。それぞれについては後ほどご紹介しますが、どの認証も国際的なスポーツイベントに提供する食材の選考基準にもなっている重要なものです。よりよい農業のやり方として農業に関わる全ての人が取り組むべき枠組みがGAPであり、そのGAPを確実に実践しより良い農場として認められる制度がGAP認証なのです。

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SDGsとの関わり

今日、世界中の共通の目標として叫ばれている「SDGs:持続可能な開発目標」と農業におけるGAPは強く関わっています。
もともと農業は地球環境と直接結びついている産業ですし、食糧の源としての役割も有しています。同時に雇用が発生する場として、労働環境や福祉的貢献、エネルギーについての問題とも関係があります。
JGAP/ASIAGAPを運営する一般財団法人日本GAP協会はGAP認証を通じて、以下の7つの取り組みの実現を掲げています。

信頼される農場管理

責任体制のルール化、機械・設備点検・整備のルール化など

食品安全の確保

生産工程の明確化、農薬など資源の管理、リスクの評価や対策など

環境保全の確保

地球温暖化対策、廃棄物の管理、生物の多様性への配慮など

作業者の安全確保

作業者の労働安全対策、労働災害への備えなど

作業者の人権福祉

労働基準法などの法令順守、差別・強制労働の禁止、健康状態の管理など

家畜衛生の確保

管理獣医師などの健康管理指導、家畜伝染病予防法の順守など

アニマルウェルフェアへの配慮

家畜に配慮した飼育環境の改善、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の輸送など

それぞれの項目は、17つあるSDGs目標の複数と関係し、SDGsの達成貢献に寄与しています。
もちろん世界的基準でもあるグローバルGAPも、持続可能な開発目標の達成を念頭に、世界中でより良い農業のあり方を追求しています。
認証を受けている農場だけでなく、農業に関わる人全員がこれらの目標とそれらに対する行動を意識し、地球環境に関わる産業を担う存在としてSDGsを引っ張っていきましょう!

主な3つの認証制度

JGAP

JGAPASIAGAPGLOBAL G.A.P
運営団体日本GAP協会FoodPLUSGmbH(ドイツ)
対象品目青果物・穀物・茶・畜産物青果物・穀物・茶農作物全般・畜産物・水産物
GFSI※1承認×
国内認証取得件数※24,3152,379669

※1 GFSI(Global Food Safety Initiative)とは、グローバルに展開する、食品安全の向上と消費者の信頼強化に向け発足した組織
※2 令和2年3月末現在

JGAPは2005年からスタートし、2007年11月より国際社会に通用する日本初の第三者認証制度として取り組みが開始されました。一般財団法人日本GAP協会が運営を行い、大きく農産物と家畜・畜産物に分けられています。農産物ではさらに青果物・穀物・茶の3分類ごとに行われており、各分類ごとに作成されたリストに記載されている品目が対象となります。また、栽培から出荷までの工程が設けられており、分類ごとに工程での確認項目が異なります。家畜・畜産物では、牛・豚・鶏・牛の乳(生乳)・鶏卵の5品目が認証の対象となり、それぞれの農場によって認証される品目が異なります。

農産物と家畜・畜産物にはそれぞれ、認証の取得を支援する「JGAP指導員」と認証の審査を実施する「JGAP審査員」がいます。JGAP指導員には、指導実績を有するJGAP上級指導員としての登録もあります。JGAP審査員は、審査員補・審査員・上級審査員に分けられています。また、審査員となるためには、学歴や経歴、研修受講などの要件があり、誰もが登録できるわけではありません。

ASIAGAP

ASIAGAPはGFSI(Global Food Safety Initiative:世界食品安全イニシアティブ)という安全な食品の供給を目的とし、食品安全認証プログラムの承認も行っている国際的なNPOから正式に承認を受けたGAP認証制度です。JGAPが備えている食品安全、環境保全、労働安全、人権福祉や農場経営といった要素だけでなく、GFSIが要求する確認事項も盛り込まれており、アジア圏内共通の国際規格を満たしたGAPのプラットフォームとして位置づけられています。

2017年7月に運営元である一般財団法人日本GAP協会から発表され、2018年10月にGFSIの承認を取得しました。これにより日本発の民間認証が国際的に通用するようになり、国際間の輸出に強みを持つようになりました。
ASIAGAPの取得に関わる指導員や審査員の在り方は、JGAPと同様であり上級審査員や上級指導員が設けられています。しかし、JGAPと異なりGFSIの設定した審査の進め方に準拠する必要があるため、1日(8時間)以上の審査が求められたり、サンプリングによる非通知審査が行われる場合があります。

GLOBAL G.A.P

グローバルGAPはGLOBALG.A.Pとも表記される、文字通り世界基準としてのGAP認証制度です。 前身は、ドイツのNPOであるFoodPLUSGmbHという機関が策定したユーレップGAP(EUREPGAP)という認証であり、ヨーロッパを中心に普及していました。そして今日の全世界的な環境への意識の高まりと食の安全性への関心を受け、「持続的な生産活動」を実践する優良企業に与えられる世界共通ブランドとしての役割を果たす認証としてグローバルGAPへと生まれ変わりました。
世界各地の名だたる小売店の多くでの調達先の選考基準として重視されており、国際的なイベントでの食材調達先としての基準でもあります。安心安全な作物というだけでなく、不作などで国内からの仕入れが困難となった際に、国外であっても同品質の作物を簡単に見つけることができる判断材料にもなります。
特徴としては、農作物や家畜・畜産物以外にも水産・養殖にも適用されることです。何より、世界120ヶ国以上で導入されているため、販路が大幅に拡張されることが魅力ですね。

地方自治体が設ける独自の認証制度

ここまで、国や国際単位でのGAP認証を紹介してきました。「スケールが大きい…」「もっと身近な認証はないの?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は、日本の様々な地方自治体やJAも独自の認証制度を設けているのです!ここでは、その地方が実施している認証制度をみていきましょう。

東京都GAP

東京都が運営主体となって策定した東京都独自のGAP認証です。2018年より開始され、野菜と果樹を対象にしています。「東京農業振興プラン」に基づき、持続可能な農業生産と地産地消を推進するために策定された、都市農業の特徴を反映した独自のGAP認証制度であり、他のGAP認証と同様に食品安全や環境保全などを盛り込み構成されています。JGAPやASIAGAP、グローバルGAPと異なり、東京都内の農家限定の認証制度となりますが、取得審査費用無料かつ更新審査も無料のため、GAP認証として非常に負担が軽くなっています。

ちばエコ農産物

GAP認証とは少し異なりますが、千葉県が環境保全と食の安心安全に配慮した農作物認証制度として設けているのが「ちばエコ農産物」認証です。2002年から開始され、認証農産物には以下の5つのポイントがあります。

【1】化学合成農薬と化学肥料が通常の半分以下であること

【2】農薬の使用歴などの栽培作業を記録すること

【3】農産物の栽培前と収穫前の2度チェック

【4】審査員が実際に田畑に行き、現地を確認

【5】ちばエコのホームページ内で栽培情報が閲覧可能

この2つの認証制度以外にも、多くの認証が国内外問わず存在します。どの認証においても厳しい審査があることに変わりはありませんので、消費者として食材を購入する際にもぜひ、気にしてみてくださいね。

まとめ

今回、食の安全性を証明し、持続可能な開発目標に貢献する農業の認証「GAP認証」について紹介いたしました。世界中で食の源である農業の働き方や環境への意識の見直しが進み、GAPの取り組みを実施し、そして認証を取得することで内外に安心安全をアピールする企業が増えてきました。 現在、農業に従事しつつもまだGAPへの取り組みに満足していない方はぜひ、今後の見直しに活かしてみてください。そして、今後農業に携わってみたい、GAP認証を取得している農家について知りたい、という方はぜひ農業ジョブでGAP認証を取得している企業を探してみてください。一度実際にお話を聞いてみるのもいいですね。

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メルカリで野菜販売は儲かる?

メルカリで野菜販売、儲かる?
鮮度は大丈夫?

スマホで簡単に始められ、個人間で物品の売買を手軽に行えることから、近年女性を中心にフリマアプリが人気を集めています。中でも、「メルカリ」は日本で7,100万ダウンロード・世界合計で1億800万ダウンロードを越え、高校生からお年寄りまで幅広い年代が利用しています。
膨大な商品を扱っているメルカリですが、野菜も販売されていることをご存知でしょうか?中古品のイメージが強いですが、新鮮な野菜も出品されているのです。

そもそも、野菜を売っていいの?

メルカリには、ルールで出品を禁止しているものもあります。食品に関しては、生の食肉や魚介類の出品が、安全面・衛生面の観点から出品が禁止されています。その他、保健所などの許可がない加工食品、消費期限が到着後1週間以内に切れる食品などの出品も禁止されています。

出品方法や取引、配送などにおいてルールやマナーを守っていれば、野菜を出品することは基本的に問題ないようです。もちろん、野菜を加工した場合には、「加工食品」として扱われるため出品できません。

誰でも野菜を販売できます

野菜を販売すること自体には、必要な免許や許可は不要です。しかし、販路の開拓は簡単なことではありません。
農業を始めたばかりで販路を確保していない人は、メルカリならばすぐに販売を開始することが可能でしょう。メルカリを活用してファンを増やしている農園もあり、上手に活用することで、さらなる販路開拓につながるかもしれません。

メルカリでは、プロ(農家)が栽培した野菜だけでなく、非農家の人が家庭菜園で栽培した野菜も販売されています。販売すれば必ず売れるというものではありませんが、誰でも販売するチャンスを得られるのです。

野菜の販売にメルカリを利用するメリット

ユーザーが多いということが、メルカリの最大の強みだと言えますが、野菜販売においてのメリットも多くあります。

無料で出品できる

メルカリは出品料がかからないため、手軽に野菜販売を開始できます。初期費用がかかる場合、売れなかったら赤字になってしまいますが、そのリスクなく販売を開始できるのは大きなメリットでしょう。

余分に収穫できた時だけ
販売できる

野菜ができすぎて余っていても、通常の出荷先に多く出せるわけではありません。余った野菜を廃棄野菜にせず、有効活用することが求められていますが、メルカリならば野菜が余った時だけ出品することが可能です。

規格外の野菜も販売できる

市場やスーパーに出荷できない規格外野菜も、メルカリでは販売できます。規格外野菜は、見た目が良くないだけで、鮮度や味、品質には全く問題ありません。色・形よりも、鮮度や安全性を重視する消費者が多く、安く良い野菜が購入できるとあってニーズは高いです。

購入者に詳しい説明ができる、
直接声が聞ける

近年は生産者が消費者に直接販売するツールが増えていますが、消費者とのふれあいを持っていない農家は少なくありません。メルカリでは購入者と直接やりとりを行うため、消費者の声を聞くことができ、野菜や栽培方法などの魅力をダイレクトに購入者に伝えられるなどのメリットがあります。

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メルカリでの野菜販売のデメリット

メリットの多いメルカリにも、デメリットがあります。デメリットを把握したうえで、上手に活用することが大切でしょう。

やりとりなどの手間がかかる

メルカリは、購入者と直接やりとりをする必要があります。購入者とのやりとりが多く、それを負担に感じる出品者も少なくありません。また、個人取引なのでトラブルが起こる可能性も否定できません。

発送方法によっては
鮮度が落ちる

野菜の種類や発送先によって、クール便でなければ鮮度が落ちてしまう場合があります。購入者がクール便を選択してくれるとは限りませんし、送料込みで販売する場合には、その分利益が薄くなってしまいます。

価格勝負になりやすい

価格勝負になりやすく、価格を下げなければ売れない場合もあります。「売れれば良い」という考えならば問題ありませんが、価格を下げたくない場合には工夫が必要です。

販売手数料がかかる

メルカリの使用料はかかりませんが、販売を行った場合、手数料が販売価格の10%かかります。販売手数料がかかるため、利益はその分薄くなってしまいます。

メルカリは販路の一つ

メルカリを利用するメリットは多数ありますが、メルカリ以外にも販売方法は数多くあり、それぞれにメリットがあります。メリットを活かした販売方法を選ぶことが、利益を生むことにつながると言えるでしょう。
メルカリは小規模の売買を想定したシステムであることから、メルカリでの販売だけで大きな収入を得ることは難しいことかもしれません。しかし、販路の一つとしてメルカリを活用することは有効でしょう。

「ネット販売」と一言で言っても、その形態や種類は多数あります。そして、今後さらに増えていくことが予想されます。卸売販売だけでなく、直接販売にネット販売に…と販路は増えています。良い野菜を作ることだけでなく、より儲かる販売方法を選択することが求められるでしょう。

カット野菜が人気!農業に影響は

人気のカット野菜を栄養面・
安全性から徹底調査!

近年は、スーパーやコンビニでさまざまな種類のカット野菜が販売されています。ライフスタイルが変化して食の簡略化が進み、購入してすぐに食べられるカット野菜の需要が高まっているのです。
しかし、「栄養面は?」「安全性は?」といった、カット野菜に対する不安の声も少なくありません。カット野菜の人気は今後も続いていくのでしょうか。また、農業界にはどんな影響があるのでしょうか。

カット野菜とは?

カット野菜とは、その名の通りカットして袋詰めされた野菜のことです。洗う・切るといった手間を省けることが大きな魅力でしょう。キャベツ・レタスといったサラダ用のカット野菜もあれば、炒め物用カット野菜も販売されています。複数の野菜がミックスされていて、一袋で複数の野菜が摂取できるものも多数販売されています。
近年の人気により、販売されるカット野菜の種類も増えています。また、野菜同様、果物(カットフルーツ)も人気を集めています。

カット野菜の需要の高まりとその背景

カット野菜は、消費量が少ない一人暮らしの人、高齢家庭はもちろん、共働きの世帯、子育て世帯まで幅広く人気を集めています。その背景には、核家族化や女性の社会進出により、食事の簡略化が進んでいること、健康志向が高まっていることなどが挙げられるでしょう。
2014年頃からは、食品大手各社もカット野菜市場に続々と進出しています。

カット野菜の千人当たり販売金額の推移

資料:農畜産業振興機構「POS調査」
株式会社KSP-SPが取りまとめた全国の食品スーパーのPOSデータをもとに作成。
年間販売金額の合計を年間来客数で除して1000を乗じた値の集計値

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カット野菜が人気の理由

手軽に野菜が食べられることから人気のカット野菜。人気の理由には、次のようなことが挙げられます。

手間が省ける

洗う・切るといった下ごしらえが必要なく、生ゴミも出ません。

安い・価格が安定

100円ほどで買えるものが多く、価格の変動もありません。

どこでも買える

近年は、どこのスーパー・コンビニでもカット野菜が販売されています。

使い切れるサイズ

腐らせてしまうようなことはなく、必要な時に無駄なく食べられます。

人気の一方で、栄養面・安全性への不安も…

カット野菜を使ったレシピ本やダイエット本も販売されるほど、売上を伸ばしているカット野菜ですが、栄養面や安全性を疑問視する人も少なくありません。

カット野菜ができるまで

そもそも、カット野菜はどのように作られているのでしょうか。野菜の種類や工場によって、若干の違いはありますが、一般的に次のような工程でカット野菜が製造されています。

カット野菜の栄養価は?

野菜には水溶性ビタミンが多く含まれていますが、水溶性の栄養素は水に溶けやすい性質があります。そのため、「カット野菜の栄養素は、洗浄によって失われているのではないか」と、心配してする人もいるかもしれません。

カット野菜の栄養価は、洗浄を含め、原料の品質や生産時期、加工・流通条件など、さまざまな影響を受けているのは事実です。しかし、水溶性の栄養素を含め、栄養素がすべて抜けているわけではもちろんありません。また、家庭で普通の生野菜を洗っても、ある程度栄養素は流出するものです。カット野菜でも、十分に野菜不足の解消には役立てられるでしょう。

消毒が必要!?安全性は大丈夫!?

市販されているカット野菜は、HACCP※(ハサップ)を元に衛生管理がなされています。どのメーカーも、加工はもちろん、保管・流通におけるさまざまな工程で適切な温度管理や継続的な監視・記録を行い、安全性の確保に努めています。

確かに、食中毒を防ぐために消毒が必要ですが、安全性を担保するための必要最低限の殺菌条件で施されています。そのため、かつての「カット野菜は臭い」という印象はなくなり、近年の人気につながったのだと言えるでしょう。

※HACCP・・・国際的に認められた食品の衛生管理の方式

カット野菜人気による農業界への影響

消費者のライフスタイルが変化し、カット野菜の需要が高まっている今、農業界にはどのような影響があるのでしょうか。
近年は、契約農家としてカット野菜用の野菜を出荷する農家も増えています。契約取引では一定の価格で取引が行えるので、卸売市場のように価格が低下することなく、安定した収入が得られるというメリットがあります。また、6次産業化の取り組みとして、カット加工に取り組む農業法人・団体も増えています。

カット野菜向けの野菜を栽培するに当たり、加工業者との連携が大変重要であり、産地から流通に至る各ステップにおいて、メリットの多い仕組みが必要になってくるでしょう。

和牛と国産牛は別物!A5ランクの基準って?気になる和牛の実態に迫る

料理の評価基準にもなる和牛。その「和牛」を名乗るには厳格な基準があります。
安心・安全な和牛とは何かを見ていきましょう。

しゃぶしゃぶやステーキ、焼肉などなど…。お肉料理が好きな方、多いですよね?テレビや雑誌のグルメコーナーでも頻繁に取り上げられているお肉料理ですが、その中でよく耳にする言葉の1つが「和牛」!「A5ランクの和牛を使用し…」や「稀少な和牛の部位を…」といった謳い文句ももはや常套句のようになっていますよね。スーパーやデパートに買い物にいった際も「和牛」という文字を見かけることが多いのではないでしょうか。
そして、その和牛を見聞きするのと同じくらい存在するのが、「国産牛」です。和牛と国産牛。文字だけ見ればどちらも日本産の牛じゃないの?違いって何?と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、和牛=国産牛という訳ではありません!
今回は、安心・安全な牛肉選びの基準にもなっている「和牛」というブランドを名乗るために必要な基準と、「国産牛」との違いをご紹介いたします。

和牛or国産牛?スーパーでも見かけるこの違いとは

和牛≠国産牛

和牛と国産牛の違い

まず、国産牛とは日本国内で一定期間生育された牛全般を指します。後ほど紹介する和牛も同様ですが、どちらも出生地が日本とは限りません。日本国内で3ヶ月以上肥育されている牛や、これまでの肥育期間の中で最も長い期間を国内で肥育されている牛が「国産牛」として扱われます。
国産牛に関して言えば、肥育場所と期間のみに基準が置かれているため、品種や出生地は問われません。生まれが日本でなくとも、日本で定められた環境内で一定期間肥育されていれば、国産牛を名乗れるんですね。

対して、和牛を名乗るためには品種に基準が置かれています。そのため、出生地や肥育場所の指定は存在しませんが、特定の4つの品種のみに限定されており、その定義は厳正を極めています。その4品種とは、「黒毛」・「褐毛」・「無角」・「日本短角種」です。それぞれの特徴については次項にて紹介しますが、いずれの品種も純血個体でなければなりません。
これらの厳選され、食肉用に品種改良が進んだ4種のみが「和牛」として名乗ることができ、国内外問わず人気を博すことができるのです!

和牛に分類される4品種

では、「和牛」として名乗る権利を得ている4品種をそれぞれ紹介いたします。

黒毛和種

黒毛和種は和牛の一種

和牛と聞いて多くの人が思い浮かぶ品種ではないでしょうか?現在日本で肥育されている和牛の90%以上がこの黒毛和種です。明治時代に外国種と交配し改良され、昭和19年に日本固有の肉用種に指定されました。特徴としては、黒毛の単色で角やひずめまで黒いことです。また、脂肪交雑の面で優れ、脂の風味やきめ細かさに定評があります。

褐毛和種

褐毛和種は和牛の一種

黒毛和種に次いで多い品種であり、熊本県と高知県で多く肥育されています。元々、赤牛と呼ばれ使役牛として上記の2県で肥育されていた品種が改良され、黒毛和種と同じく昭和19年に日本固有の肉用種に指定されました。地域によって若干体毛の色が異なり、金色やオレンジ色などの褐色が特徴的です。また、脂の含有量が少なく、ヘルシーでまろやかな赤身が堪能できる品種となっています。

日本短角種

日本短角種は和牛の一種

東北地方で多く肥育されている品種であり、在来の南部種に外来のショートホーン種を交配し、改良されました。改良が重ねられた結果、昭和32年に日本固有の肉用種に認定されました。濃褐色の毛を有し、赤身の多さ、柔らかい肉質、豊富な栄養素の含有が特徴です。

無角和種

無角和種は和牛の一種

山口県を主産地とした、現在はかなり頭数が減少してしまっている品種です。黒毛和種にアバディーン・アンガス種という外来種を交配し生まれました。黒毛和種、褐毛和種と同様に昭和19年に日本固有の肉用種に認定されました。赤肉を豊富に含むことから、美容や健康の面からも注目されています。

『和牛』とされる牛はこのたった4つだけなのです!
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登記とトレーサビリティ

これまで紹介したように、今日、和牛は限られた4品種のみが認定されています。それゆえに、国内外で人気があることも頷けますし、食す際にも安心できますよね。しかし同時に、それらの限定的な和牛の品種を貴重な資源として守らなければならない、という課題もあります。また、消費者に対して安全・安心を保証し、「和牛」としてのブランドを維持する義務もあります。これらの課題や義務を果たすために、和牛の登記やトレーサビリティといった制度が設けられています。ここでは、和牛というブランドを支える制度を紹介します!

和牛の登録事業

和牛の登記事業

和牛の登録事業は、大正9年から10年にかけて各県で始まりました。今日では、(社)全国和牛登録協会などの家畜登録機関が中心となり、和牛4品種の登録を管理しています。
登録の区分は、生育段階によって分けられていますが、最も重要なのは子牛の時に登録される「子牛登記」となります。それぞれの登録内容について、簡単にご説明いたします。

子牛登記

すべての登録事業の基礎となる記録です。出生後4ヶ月以内に、地域の登記検査委員等が生産地において子牛の登記検査を行います。母牛の登録証明書や授精証明書といった必要書類の確認に加え、個体識別耳標の装着確認や身体的異常の有無の確認が行われ、個体を識別するとともに子牛登記証明書を発行し、品種の証明とします。この記録は、牛の戸籍の管理だけでなく、母牛の繁殖成績としても活用され、「和牛」として消費者からの信用を獲得する根拠となる、大切な証明です。

基礎・本原・高等登録

すべての登録事業の基礎となる記録です。出生後4ヶ月以内に、地域の登記検査委員等が生産地において子牛の登記検査を行います。母牛の登録証明書や授精証明書といった必要書類の確認に加え、個体識別耳標の装着確認や身体的異常の有無の確認が行われ、個体を識別するとともに子牛登記証明書を発行し、品種の証明とします。この記録は、牛の戸籍の管理だけでなく、母牛の繁殖成績としても活用され、「和牛」として消費者からの信用を獲得する根拠となる、大切な証明となります。

【基礎登録】
繁殖牛として必要な基本的資格条件を満たした牛。この中で、極めて能力の高い牛は、高等登録を経て、改良の中核となる場合もあります。

【本原登録】
和牛の改良・増殖を集団的に取り組んでいる地域のベースを構築する牛。改良の基礎となる種牛の供給が主たる役割であり、この中から優れた個体は高等登録へとすすみ、改良の中核的な牛群を構成します。

【高等登録】
ある程度生産に用いられ、具体的な繁殖成績が判明している中で、血統・体型・繁殖成績・産子成績・不良形成に関する5つの資格条件を満たした種牛に対して与えられる最も高次の登録区分。地域や経営の中で、和牛の改良の中核となります。

これらの登録をすることで、証明書が発行され、育種改良の基本的な情報の提供や取引に使用されます。また、家畜登録機関によっては種雄牛の生産能力を計測する検定などを実施していることもあります。

そして、消費者への更なる安心・安全性を保障するため、平成15年12月1日より施行された牛トレーサビリティ法に基づき、子牛登記時に確認される個体識別耳標の装着が義務付けられています。耳標に記された個体識別番号から、消費者は購入した和牛の出生日や出生地、流通経路などの閲覧が可能となり、その情報が「和牛」としての確たる証拠にもなります。

消費者からの信頼される「和牛」というブランド価値を守るために、国・自治体・組織が一丸となって制度作りに取り組んできたんですね。

よく聞く「A5ランク」といった格付けについて

「A5ランク」は美味しさの証明じゃない!?

和牛という言葉と同じくらいテレビなどで耳にするワードが「A5ランク」などの等級ではないでしょうか。A5ランクの牛肉=極上肉の代名詞、つまり最高に美味しい!という印象を持たれる方が多いかもしれません。しかし、この等級は美味しさを表している等級ではないのです!ここでは、和牛も振り分けられているこの等級について解説します。

歩留等級

歩留等級とは、その牛1頭からどれだけの肉が取れるのか、ということを表しています。A、B、Cの3段階で評価され、Aに近づくほど多くの牛肉が取れるということになります。 つまり、「A5」という表記の内、アルファベットの「A」はこの歩留等級を表しており、生産牛としての重要な資質「どれほど市場にお肉を提供できるか」という市場価値を評価しているのです。

肉質等級

対して、数字の「5」は、肉質等級という文字通り肉質の評価値を表しています。この肉質等級の評価項目は4つあり「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉の締まりおよびきめ」「脂肪の色沢と質」となっています。それぞれの項目を1~5の等級で評価し、その中で最も低い数値で等級が決定されます。つまり、「5」を冠していれば、この4項目全てにおいて最高評価の5を獲得していることになります。逆に、4項目中3項目が「5」であっても、1項目が「3」であればそのお肉の等級は「3」となってしまうのです。では、この4つの評価基準を見ていきましょう。

肉質等級の4項目

脂肪交雑

お肉の霜降り度合いの評価。脂肪交雑基準(B.M.S)という12段階の基準によって評価され、数値が上がるにつれ、霜降りの度合いが上がります。度合いがかなり多いとされる評価値8~12までが5等級を獲得します。

肉の色沢

肉色と光沢の複合的評価。肉色は牛肉色基準(B.C.S)という7段階の基準によって評価されます。1はオレンジ色に近く、7に近づくことで赤みが増していきます。良い色沢は3~5とされています。また、その色沢の判断に加え、目視による光沢の良し悪しの判定が行われ、両者の複合的判断の結果、等級が決定されます。

肉の締まりおよびきめ

肉眼による締まりときめの判定。目視によって、肉の締まりときめの良さを評価します。締まりがかなり良く、きめもかなり細かいもののみが5の等級を得ることができます。

4脂肪の色沢と質

脂肪色と光沢および質の複合判定。脂肪色は牛脂肪色基準(B.F.S)をもとに7段階によって評価され、1に近いほど白くなります。脂肪の色がきれいとされる1~4の評価を受け、かつ光沢と質がかなり良いものだけが5等級となります。

和牛のランク付けについて

ここまで牛肉に与えられる等級をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?お気づきになられたかと思いますが、歩留等級にも肉質等級にも味や風味に関する評価基準はないのです!つまり「A5ランク=最高に美味しい」という訳ではないんですね。 しかし、ここで評価される脂肪の質やきめの細かさは、お肉の美味しさに通じる重要な要素でもあり、霜降りの割合が高くツヤのあるお肉は非常に人気が高いため、市場では高値で取引されています。それゆえに、A5ランク=高級=美味しさの証明という印象が広まっているのでしょうね。
和牛の中でも脂肪が少なく、赤身が主体の褐毛和種や日本短角種はA2やA3という評価が多いですが、近年では健康志向の高まりに伴い、A4やA5ランクのお肉に迫る価格の上昇を見せています。牛肉を食べる時、お買い求めの時は、この等級だけでなくそれぞれのもつ特色にも注目してみてください!

まとめ

トラクターで飼料を運ぶ農家

和牛と国産牛の違い、そして和牛というブランドを守るための取り組みを知っていただけましたか?日本特有の美味しい牛肉は、今や世界中でも求められるほどです。その高い品質を誇る和牛を安定して食卓に提供するために最も大切な存在は、何より生産を担う農場です。 今回の記事を読み、私たちの食に必要不可欠なお肉を生産する農場に興味を持たれた方は、ぜひ自分に合いそうな農場を見つけてみてくださいね!
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よくある質問

和牛は、日本国内で育てられた特定の品種の牛を指し、その肉は非常に高品質で知られています。代表的な和牛の品種には、黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4種類があります。特に黒毛和種が最も広く知られ、国内外で高い評価を受けています。

松阪牛: 三重県松阪市周辺で育てられ、豊かな風味と柔らかさで有名です。 神戸牛: 兵庫県神戸市周辺で育てられ、繊細な霜降りと旨味が特徴です。 近江牛: 滋賀県で育てられ、歴史と伝統のある高品質な和牛です。 米沢牛: 山形県米沢市周辺で育てられ、甘みと柔らかさが特徴です。

和牛は脂肪が細かく入り込み、霜降りの程度が高いです。また旨味成分が豊富で、独特の甘味と風味があります。

春キャベツは普通のキャベツと何が違う? キャベツといっても色々ある!

世界にはさまざまな種類の野菜が存在します。

皆さんが日常で食べている野菜。いま、世界で流通している種類を合計すると800種類以上といわれています。その種類の多さが八百屋の由来になったという諸説もあります。そんな数多くの野菜の中で、皆さんが思い浮かべるのはどんな野菜ですか?レタス、キュウリ、ジャガイモ、白菜、ニンジン…
いろいろな野菜がありますが、今回は、サラダや炒め物など、どんな調理法でもおいしく食べられる「キャベツ」についてお話します!

主な産地

キャベツの種類

年間を通していろいろな料理に使われているキャベツは、食文化が豊かな日本人にとって欠かせない野菜です。
皆さんが普段何気なく食べているキャベツですが、ケール、芽キャベツ、紫キャベツ、プチヴェールなど、6種以上も種類があり、その中の品種を合わせると45種以上にのぼります。
私たちの身近にもたくさんの種類のキャベツがありますね。
今回はその中から、スーパーで日常的に目にする緑色のキャベツの生産地について見ていきましょう。

日本のキャベツ収穫量

都道府県収穫量(t)割合(%)
全国1,434,000
1位愛知262,30018.3%
2位群馬256,50017.9%
3位千葉119,5007.4%
4位茨城105,8005.0%
5位鹿児島72,2004.6%
農林水産省 令和2年産野菜生産出荷統計

国内でのキャベツの主な産地は、愛知県、群馬県、千葉県。生産量1位は愛知県で、全国の18%を占めています。続いて2位の群馬県が17.9%。この2県が日本のキャベツの主な産地です。表を見ると、関東地方をメインに、各地方でキャベツが生産されていることが分かりますね。
各地方で生産されるキャベツは、産地により種類に違いがあるんですよ。次は、その違いについて説明します。

春・夏秋・冬キャベツって何が違うの?

春キャベツ

都道府県収穫量(t)出荷量(t)
1位愛知62,50059,400
2位千葉56,00052,000
3位茨城44,70042,700
4位神奈川41,40039,800
5位鹿児島19,10017,500

夏秋キャベツ

都道府県収穫量(t)出荷量(t)
1位群馬244,10022,1400
2位長野56,70051,700
3位北海道45,40043,200
4位岩手28,80026,400
5位茨城21,40020,200

冬キャベツ

都道府県収穫量(t)出荷量(t)
1位愛知199,600188,000
2位千葉60,40057,100
3位鹿児島52,50046,900
4位茨城39,70036,900
5位神奈川23,20021,600

農林水産省 令和2年産野菜生産出荷統計

キャベツは季節によって、春キャベツ、夏秋キャベツ、冬キャベツに分けられ収穫地が異なります。 収穫地や種類にもよりますが、種まきから育てて収穫までにかかる栽培期間は、110日~140日ほどです。

春キャベツ

春キャベツ

春キャベツは4月~6月に収穫されます。他の時期に収穫されるものに比べると、色が鮮やかな黄緑色をしており、葉が柔らかくてみずみずしいのが特徴です。主な産地は愛知県、千葉県、茨城県です。それぞれの県で盛んに栽培されています。

夏秋キャベツ

春キャベツの季節が終わると、7月~10月に収穫される夏秋キャベツが市場に出回ります。

夏秋キャベツ

春キャベツと冬キャベツの中間的な特徴があり、葉は厚めでも柔らかく甘みがあり、生でも加熱でもおいしく食べられます。夏秋キャベツは、標高800m〜1,400mほどの群馬県嬬恋村で主に生産されており、高原キャベツともよばれます。

冬キャベツ

冬キャベツは11月~3月に収穫されます。楕円形をしており、葉と葉の間がギュッと詰まっていて、固めでシャキシャキとした食感があります。主な産地は愛知県で、2位の千葉県と1桁差が付く生産量を誇ります。皆さんが冬に食べるキャベツは、愛知県のものを食べているかもしれませんね。

冬キャベツ

写真で見ると、収穫時期によってキャベツの見た目や身の詰まり方が違うことが分かります。スーパーでキャベツを選ぶ際に注目してみてください。
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関東・関西での流通のちがい

日本に普及するまでの歴史

キャベツの起源は、紀元前600年ごろのヨーロッパの地中海沿岸と言われています。古代ギリシャ人に薬として用いられ、紀元前400年前に食用として栽培が始まったという歴史があります。 野生として生育していたケールがキャベツの始まりで、私たちが普段目にしているような球体型のものではありませんでした。長年に渡りヨーロッパ各地で品種改良が重ねられ、約1000年前に葉が丸く巻く品種が作られたことで現在の形のキャベツになりました。日本では、第二次世界大戦後に洋食文化が広まった際、トンカツの添え物として、全国で食べられるようになりました。

キャベツは地中海沿岸のような冷涼な気候を好み、生育適温は15℃~20℃です。
日本では、各地の涼しい季節に合わせて南から北へ生産地をリレー形式で繋ぐことで、一年中、美味しいキャベツを食べられます。それでは、東京と大阪、それぞれの市場で取引されるキャベツの月別入荷実績から、流通のちがいについて見ていきましょう。

東京のキャベツの流通

令和元年 キャベツの月別入荷実績(東京都中央卸売市場計)

東京のキャベツの流通
農畜産業振興機構「ベジ探」、原資料:令和元年東京都中央卸売市場年報

東京の月別入荷実績を見ると、季節によって産地を受け継いでキャベツを供給していることが分かります。
11月から5月にかけて主に愛知から入荷があります。暖かくなるに連れて神奈川県の生産量が増え、関東に生産地が移動しています。暦上初夏と言われる5、6月に千葉県に産地が移り、夏本番の7月~10月は高原で涼しい気候の群馬県で夏秋キャベツの生産が行われていますね。

大阪のキャベツの流通

令和元年 キャベツの月別入荷実績(大阪中央卸売市場計)

大阪のキャベツの流通
農畜産業振興機構「ベジ探」、原資料:令和元年大阪市、大阪府中央卸売市場年報

大阪の月別入荷実績を見ると、東京と同様に産地を受け継いでいます。11月から6月にかけて主に愛知から入荷があります。また、東京にはない兵庫県からの供給もあり、関西近辺の産地のものが市場に流通していることが読み取れますね。6月からは茨城県を皮切りに関東に産地が移動し、7月から10月は群馬県産および長野県産で全入荷量の90%以上を占めています。

まとめ

いかがでしょうか。1年を通して食べられるキャベツには、南から北へ産地をリレーして皆さんに届けられているという秘密がありました。これからは「今食べているのはどこのキャベツがなのかな」と思い浮かべながら食べてみると面白いかもしれないですね。
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よくある質問

キャベツはアブラナ科の野菜で、葉が重なり合って丸い形を形成します。原産地はヨーロッパで、栄養価が高く、ビタミンCや食物繊維が豊富です。生でサラダに使ったり、炒め物や煮物、漬物などさまざまな料理に利用されます。

ケール、芽キャベツ、紫キャベツ、プチヴェールなど、6種以上も種類があり、その中の品種を合わせると45種以上にのぼります。

キャベツの歴史は古代ヨーロッパに遡ります。キャベツの原種は地中海沿岸地域で栽培され、紀元前1000年頃には古代ギリシャやローマで食用として広く利用されていました。中世ヨーロッパでは栽培技術が発展し、品種改良が進みました。日本には江戸時代後期にオランダ商人によって伝えられ、明治時代に本格的に栽培が始まりました。現在では、キャベツは日本を含む世界中で広く栽培され、さまざまな料理に利用される人気の野菜となっています。

日本の果物の生産数をランキング化!日本はフルーツ大国?

果物といえば何を思い浮かべますか?

日常の生活でさまざまな種類の果物を目にするかと思います。
皆さんは果物といえば何を思い浮かべますか?今回は日本で流通している果物にフォーカスを当てて、各種の特徴、栽培方法、収穫量などをご紹介いたします。

日本で一番育てられている果物は何だと思いますか?

第1位【みかん】

日本には四季があり、季節に応じて旬となる果物がありますよね。そんな中で、日本で一番収穫されている果物は何でしょうか?農林水産省が行った調査「農林業センサス」のデータを見てみましょう!

果樹の収穫量(令和元年産)

順位品目収穫量(トン)
1位みかん746,700
2位りんご701,600
3位日本梨209,700
4位かき208,200
5位ぶどう172,700
6位もも107,900
7位うめ88,100
8位キウイフルーツ25,300
9位西洋なし28,900
10位すもも18,100
11位くり15,700
12位おうとう16,100
13位パインアップル※17,460
14位びわ3,430
資料:「果樹生産出荷統計」(農林水産省)
※1は沖縄県のみの数値である。

表を見てみると、日本1位の収穫量の果物はみかんであることが読み取れますね。みかんは、今から約500年前の室町時代に熊本県、和歌山県、静岡県で栽培が盛んになりました。中国大陸との交流により現在の熊本県にみかんが伝わったことから始まり、その後に糸我村(現和歌山県有田市糸我)で農業を営んでいた伊藤孫右衛門が地域を活性化させたいと、熊本からみかんの苗木を持ち帰ったことがきっかけで和歌山県でも栽培が盛んになりました。また、静岡県では料理の薬味に使っていた「橘」ゆかりの雑種である「白羽こうじ」が産出され、全国的に知られていたようです。

それから江戸時代になり、船で荷物を大量に運ぶことができるようになると、全国に広まり日本を代表する果物になりました。では、今日までみかんの生産が盛んなのはなぜでしょうか?

それは、日本の品種改良の技術力の高さのよるものです。みかんは冬が旬の果物で、日当たり良好で水はけのよい土壌、風が強く吹きつけない環境を好みます。日本の気候と相性がいいことに加え、長年の品種改良の賜物による10月以前に収穫が始まる早生みかんや、生育に必要な温度や水をコントロールできるビニールハウスで育てるみかんなど、季節に縛られず、収穫が可能になっていることが日本でみかんの収穫量が1位である理由だと考えられます。
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第2位【りんご】

続いて2位はりんごです。みかん、りんごは3位の日本梨と大差をつけて生産量が多いですね。一口にりんごといっても、その品種は多岐に渡ります。品種別にみると、青森県の特産物であるりんごの品種「ふじ」は、全体の収穫量70万1,600tのうち、35万9,300tも生産されており、りんご別の生産量で1位です。2001年の品種別生産量では世界1位にもなり、日本を代表する果物です。
ちなみに、2010年度のりんご全体の収穫量は、78万6,500tで、みかんの78万6,000tを抜いて1位でした。その後、みかんに生産量を抜かれた要因として、地球温暖化による気温上昇で、着色不良、虫害の多発などが考えられます。
りんごもみかんと同じく、品種改良を重ねた結果、日本で頻繁に生産されるようになりました。明治時代にアメリカから75品種のりんごを輸入し、日本の環境に適するように品種改良されたものが現在の市場に流通しています。

第3位【日本梨】

3位は日本梨です。日本梨は海外から伝来した他の果物よりも早くから日本に浸透しており、一番古い記録では、弥生時代後期から梨を栽培してきたとされています。日本梨は、昭和初期まで保存食として流通しており、日本人にとっては大切な位置づけの食料でした。そこから徐々に品種改良が進み、甘くておいしい水菓子として今日まで愛される果物となりました。
日本梨の生産量は2010年は25万8,700tで、2019年は20万9,700tです。生産量は年々減少しておりこちらも地球温暖化が影響しています。

日本は世界有数のフルーツ天国!

このようにしてランキング化してみるとスーパーマーケットなどでよく見かける果物がやはり上位に食い込んでいますね!四季と恵まれた気候を持つ日本は世界の中でも豊かな果物のバリエーションを持っています。ここからは他のフルーツにも触れてみましょう!

えっ!?この果物も!?国産フルーツはこんなにたくさん!

観光農園にワイン造り…多岐にわたる【ぶどう】栽培

関東圏にはぶどう園が多く、都心部から車で1,2時間程度でぶどう狩りができることからおそらくなじみ深い農業に感じるであろうぶどう栽培。しかし、現在では国産ワインなど今までにはなかったぶどう栽培が増加しています!!

ぶどうの収穫量(2019年産)

順位都道府県収穫量(トン)割合
1位山梨36,90021.4%
2位長野31,70018.4%
3位山形16,4009.5%
4位岡山15,8009.1%
5位福岡7,6404.4%
6位北海道6,9004.0%
7位青森4,6302.7%
8位大阪4,5402.6%
9位愛知4,1102.4%
10位岩手3,5102.0%
合計172,700100.0%
資料:「作物統計調査」(農林水産省)

ぶどうのデータを見てみましょう。表を見みると、1位、2位の山梨県、長野県で約4割が生産されており、中部地方を含め全国各地で生産されていることが分かりますね。ぶどうは農繫期を8月~10月頃に迎える秋の果物です。ぶどう栽培に関する作業はさまざまで、ワイン用ぶどうの生産の仕事では、収穫・選別が行われた後ぶどうの実と果梗を分離する破砕作業や、果汁を絞り出した後にワインに仕上げる発酵、熟成作業も行うため、農業の6次産業化に携わりたい方におすすめの果物です。

また、観光農園と呼ばれるぶどう狩り体験を行っている農園もあるため、観光客に対する接客業務も収入の一つとなる農業形態も多いです。

みかんに似ている?キウイフルーツ栽培とは

通年スーパーでよく見かけるキウイフルーツ。今となっては日本の食卓の一部として馴染んできています。そんなキウイフルーツ、実はある意外な県が一番の生産量を誇っているのです。

キウイフルーツの収穫量(2020年産)

順位都道府県収穫量(トン)割合
1位愛媛4,74021.1%
2位福岡3,58015.9%
3位和歌山3,45015.3%
4位神奈川1,4006.2%
5位静岡9674.3%
6位群馬8263.7%
7位山梨7783.5%
8位栃木6843.0%
9位佐賀5802.6%
10位香川5712.5%
合計22,500100%
資料:「作物統計調査」(農林水産省)

キウイフルーツの全国生産量1位は愛媛県です。愛媛県は特産物のみかんが有名だと思っていたため、キウイフルーツの生産も盛んなことに筆者は驚きました。調べてみると、愛媛県は30年以上連続でキウイフルーツの生産量が1位です。キウイフルーツは、みかんと同じ気候条件を好む果物のため、愛媛県でも生育が盛んになりました。キウイフルーツの旬の時期は9月下旬~12月とされており、収獲に向けて適切なタイミングで果実の成長を管理することが高品質でおいしいキウイフルーツ作りをする上で不可欠です。

キウイ農園での仕事には、手作業で受粉を行う作業があります。キウイフルーツは植物の中では珍しく、オスとメスの個体が別々に存在します(オス・メスが別々に存在している植物は全体の5~6%といわれています)。そのため、自然任せでは効率よく受粉ができないので、春の4月~5月頃に、手作業で受粉作業を行うこともあります。他の果物や野菜は、虫に受粉作業を任せることが多く、受粉作業を手作業で行うのはキウイ栽培の特徴といえます。

高級フルーツの一つ、国産パイナップル

続いてパイナップルを紹介します。日本で生産されているパイナップルは99.9%が沖縄県産で、収穫量は7,390tです。ほとんどが沖縄県で生産されており、残りの0.1%が鹿児島県で生産されています。ちなみに、日本に流通しているパイナップルの97%がフィリピン産で、残りの約3%を沖縄県が担っています。国産のパイナップルは、輸入物と比べると割高になってしまうため、一部のフルーツ店や百貨店、インターネット通販などで国産ならではの特別感ある品種が流通しています。パイナップルは、水はけがよく高温な気候を好むため、沖縄県に生育環境が適しています。収穫のシーズンは4月~8月頃のため、高い気温の中、収穫作業を行う必要があります。乾燥に強い果物のため栽培にほとんど水は必要とせず、毎日の手入れをする必要はないようです。また、収穫されたパイナップルは全国に発送されるため、輸送手段である、船への積込に間に合うようスピーディーに選別・梱包をしていく作業もあります。

沖縄で農業をしてみたい方はこちら!

まとめ

同じ果物といっても、種類や歴史、栽培が盛んな地域などはさまざまです。今回の記事を読んで、日本の果物について少しでも理解を深めていただけたら幸いです。

よくある質問

まずは、インターネットや農業セミナーを通して栽培方法、必要な設備、コスト等必要な情報を集めます。その後、土地や苗木等の資本の調達をします。この際、新奇就農者向けの国や各地方自治体の支援制度を利用するといいでしょう。

地域の気候に合った果樹を選ぶことが重要です。例えば、寒冷地にはリンゴやサクランボ、温暖地には柑橘類やブドウが適しています。また、土壌の特性、出荷先との距離などを考慮にいれる必要があります。

高品質な果物は海外でも需要が高く、日本の果物は特にアジア圏で高い評価を得ています。日本産果物の国際市場の拡大により果樹栽培は非常に将来性の高い農業となっています。

冬に野菜はどう育つ?冬野菜あれこれ

スーパーに行けばいつでも美味しい野菜がある。
冬でも野菜は育っている!

農家さんの一年をなんとなくイメージすると「春に種を植え、夏に育ち、秋に収穫する」、なんて考える人が多いのではないでしょうか?
実りの多い秋を超え、少しずつ寒くなってくると農家さんの仕事は減る。実はそんなことはありません!
寒い時期に欠かせない鍋料理の主役である白菜や水菜、あつあつが嬉しいおでんの大根、みんな大好きカレーのジャガイモや人参は、秋の終わりから冬にかけて旬を迎えます。
むしろ冬からが繁忙期、そんな農家さんも大勢いるのです。

また、八百屋やスーパーに行けばいつでも新鮮な野菜を買うことができます。
例えば春から夏にかけて旬のアスパラガスが、冬だからといって店頭から消えることはまずありませんよね。
それらも全て、農業に携わる方の努力があってこそ成り立っているのです。
それでは冬の野菜についてじっくりと見ていきましょう。

そもそも冬野菜ってなんだろう?

冬の野菜は甘くておいしい!?

そもそも冬野菜は、どうして寒い時期に収穫の最盛期を迎えるのでしょうか?
それはルーツが寒い地域にあるからです。例えば大根のルーツは地中海近辺とされ、ネギのルーツは中央アジアとされています。これはどちらも北海道と同等以上の緯度にある地域であり、元々寒い地域で栽培されていた野菜なのですね。
それを日本で育てようとするならば、冬が旬となるのは自明の理です。

また寒い地域をルーツに持つ野菜には、寒さから自分の身を守るために水分を減らして糖分を増していくという特徴があります。
水分中の糖度が高くなることで凝固点が下がり、野菜は凍りにくくなるのです。ちなみに大根などの地中に埋まっている野菜は、地表に近い方が寒さを感じるため甘くなるのだとか!
またほうれん草は、夏に収穫されるものよりも冬に収穫されるものの方が3倍のビタミンCを含んでいるという研究結果もあります。
厳しい環境の中で育つ野菜は栄養価も高く、たくましく育つのですね。

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冬の野菜は関東で育つ?

冬野菜はどこの地域で多く栽培されているのでしょうか。いくつか具体例を挙げながら見ていきましょう。

まずは大根。東京都中央卸売市場の取扱量第一位は千葉県、第二位は神奈川県です。
先に述べたように、大根のルーツは地中海近辺。千葉と神奈川は同じく海に面した地域です。潮風に負けずに育つという特徴から栽培が盛んになったという経緯があるほか、関東ローム層の赤土層の柔らかい土壌が、地中深く伸びる大根の栽培に適しているという理由もあるようです。同様の理由で、関東圏では冬野菜のネギも盛んに栽培されています。

次に白菜。第一位は茨城県、第二位は長野県です。
冬野菜の代名詞として知られる白菜は実はそこまで寒さに強い性質ではなく、水分量も多いためあまりに寒すぎると中身が凍ってしまうのだとか。
上部をひもで縛るなどの工夫をほどこしながら栽培をするそうで、比較的緯度が低く、かつ日照時間も長い関東平野や那須高原などで盛んに栽培されています。

このように、地理的・地質的要因から冬野菜は関東圏で栽培されていることが多いのですね。

北海道でも冬野菜は育つのか?

北海道でもならではの栽培方法とは?

さて、それでは地域を少し変えて北海道を見ていきましょう。
冬の北海道といえば、一面を雪でおおわれた銀世界をイメージしますよね。そんな環境でも冬野菜は育つのでしょうか?

結論を先に述べると、冬の北海道でも野菜は盛んに栽培されています!みなさんは「雪下野菜」や「越冬野菜」という言葉を聞いたことがありますか?

これらは読んで字のごとく、「雪」の「下」で「冬」を「越」す野菜の生産方法です。
越冬キャベツが有名な北海道和寒町では、この生産方法が生まれたのは偶然の出来事がきっかけだったと言われています。
その昔、豊作で市場価格が暴落し、出荷しきれず残ったキャベツを仕方なく畑に放置したそうです。やがて雪が解けて春を迎えた頃、まだ青々としているキャベツが畑に並んでいるのを見て食べてみたところ、その甘さは普段栽培しているものを大きく上回っていたのだとか。

野菜は寒さを感じると糖度を増す傾向にあります。しかしあまりに寒すぎると凍ってしまう。
雪が覆うことによって寒さを与えながら、凍ることを防ぐ(かまくらと同じ原理ですね)ことに偶然成功したのですね!

他にもジャガイモや白菜、人参なども同じ手法で美味しく育てることに成功しており、雪下野菜・越冬野菜は見事ブランドとして全国的に売り出されているそうです。

北海道の冬野菜生産量

それでは次に北海道の冬野菜生産量を見ていきましょう。
代表的な冬野菜と北海道の生産量ランキングがこちらです。

東京都中央卸売市場取扱量全国ランキング/シェア北海道産の取扱量が多い時期全国の取扱量が多い時期
大根約20,000t3位(シェア約18%)7月~10月11月~3月
ネギ約3,000t7位(シェア約6%)8月~11月9月~1月
白菜約2,500t5位(シェア約2%)9月~10月10月~2月
男爵いも約28,000t1位(シェア約90%)9月~12月9月~12月

先ほど越冬野菜という生産方法の話をしましたが、それは全体で見るとあくまで小規模な話。しかし、大根や白菜、ネギなどの生産量は上位に食い込んでいるところは、流石というべきでしょう。
ちなみに全体的な時期が少し早めになっているのは気候的な要因です。

また、じゃがいもは秋口から収穫を行い、雪下などでの熟成期間を経ての出荷のため時期が冬になっているようです。もちろん冬にお休みをとる北海道の農家さんもいるようですが、一年に渡って栽培をする農家さんも少なくはないのですね!

年中おいしい野菜が食べられる理由はなんだろう?

冬野菜は畑以外でも育っている!

それでは最後に、スーパーに行けば年中おいしい野菜が食べられる理由についてです。

種まきの時期を調節して収穫時期を前倒す、または後ろ倒す

一番オーソドックスな方法がこちらです。足が早いキャベツなどの葉のものは2月~9月頃まで2、3週間おきに種まきをしてシーズンを通して収穫できるようにします。1つの苗から1つしか育たないキャベツやブロッコリーなどは何度かに分けて植える農家さんもいるそうです。

ハウス栽培を行う

ハウス栽培を行えば、温度や湿度などの調節が可能なため、季節を問わず収穫を行うことができます。ハウスで育てられる主な野菜は、レタスなどの葉の物などの作物です。

長期保存、熟成を行ってから出荷する

じゃがいも、人参、ニンニク、キャベツ、南瓜、玉ねぎなどの身体を温めてくれる根菜類などは適温で保存すると1年は持ちます。
また熟成を行ってから出荷することで、味がよくなる野菜もあり、そうした工夫をされている農家さんもいるのだとか!

植物工場にて栽培を行う

植物工場とは、屋内にてLEDなどの人工光と栄養を与え徹底管理し栽培する方法です。生育に効果的な色の光だけを当てる、各種センサーで状況を管理するなど非常にハイテクな栽培方法で、天候に左右されず、無農薬で、都市部で生産した新鮮な状態のものを出荷することができるというメリットがあります。
現在、植物工場を利用した新しい事業に取り組んでいる大手企業も多くあります。しかし、ノウハウが確立されていないほか、コストもかかるため、これからに期待の高まる新しい生産方法です。

まとめ

冬は雪が降るので野菜を栽培している農家さんはお休みなのだろう、と実は私もそう考えていました。
しかし実際は、創意工夫をしながら冬野菜や冬に出荷できる野菜を栽培している農家さんも大勢いらっしゃいます。

お仕事を探される際、こうした知識を持って農業ジョブを見てみると違った視点から面白い発見があるかもしれません。

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いちご農家の年収は?年間スケジュールも徹底解説!

いちご農家の年収はいくら?仕事内容は?

某テレビ番組の調査で「日本人の好きな果物ランキング」が発表され、その1位に輝いたのは「いちご」でした。
日本人はいちごが大好き。総務省の調査によれば、2022年のいちごの一人当たりの年間購入数量は755gで、支出金額は1,209円でした。これはいちごのパックに換算すると3つ分に相当します!4人家族の場合は合計12パックを買っている計算になるのは驚きです。
また、いちご農家の数は2020年時点で2万3千件以上にも上ります。こうしたいちご農家さんたちの頑張りが、我々の食卓に彩りを添えてくれているのです。

では、いちご農家さんはどんな1年間を送っているのでしょうか。年収も含め、いちご農家さんのリアルを深堀りしていきます!
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日本のいちご事情について

いちごの名産地といえば?

北海道から九州まで、全国各地で栽培されているいちご。その生産量の分布はどのようになっているのでしょうか?
トップ5をランキング形式にしてみました。

主要な品種収穫量
1位栃木県とちおとめ24,400t
2位福岡県あまおう16,800t
3位熊本県ゆうべに11,700t
4位愛知県章姫10,600t
5位静岡県紅ほっぺ10,400t

やはりとちおとめで有名な栃木県がいちごの収穫量1位でした。栃木県はいちごの収穫量を55年連続で日本一を誇っています。 栃木の内陸型の気候は、夏と冬、そして昼と夜に大きな寒暖の差があり、 この寒暖の差が甘くておいしいいちごをつくるのだそうです。
本来いちごの栽培は比較的涼しい環境が良いとされ、栽培適温は17~23℃。多雨湿潤の日本はそもそも栽培に向いていませんが、ビニールハウスなどの栽培技術が普及し日本でも育てられるようになったのだとか。

ちなみに輸入いちごは、その90%以上がアメリカからのものです。アメリカでは主にカリフォルニアで栽培されることが多く、排水性の良い土壌がいちごの栽培に向いているそうです。ちなみに世界で一番いちごを作っている国は中国とのことです。

旬っていつなの?

皆さんはいちごの旬がいつかをご存じでしょうか。関東以西の地域では一般的に12~2月頃に最盛期を迎えるとされており、いちご狩りなどの観光農園も1~5月頃をいちご狩りのシーズンとして定めているところが多い傾向です。しかし冷涼な北陸や東北では6月頃までいちご狩りを行っているところもあります。
さらに、他の地方と気候が大きく異なる北海道は6~7月頃がいちご狩りのシーズンです。
ちなみに出荷量こそまだ多くありませんが、夏から秋にかけて収穫される「夏秋(かしゅう)いちご」という種類も北海道や東北、長野県の一部で生産されており、6~11月上旬に出荷されています。

元々ハウス栽培が行われる1960年代頃までは、いちごの旬は春から初夏にかけてでした。春の暖かな陽気によっていちごは目覚め、そこからじっくりと花と実をつけていく習性があったのです。実際にいちごは夏の季語として俳句で詠まれています。
しかし、いちごの需要が増えるのはクリスマスシーズンです。そこに合わせて人工的に旬を作り変え、現在のような「冬の果物」という印象がついたんですね!

いちご農家の年収は?

いちご農家の年収

いちご農家の年収は600万~900万円です。また、いちご農家の平均年収は650万円です。これは、農家全体の平均年収と比べると高い水準にあることがわかります。
次に、農林水産省の「品目別経営統計」(2007)をもとに農業所得率を計算してみましょう。農業所得率を見ると、農業粗収益のうち、農業所得として実現している割合がわかります。
いちご農家の農業所得率は52.8%と施設野菜の中ではトマトに次いで高く、比較的利益を上げやすい経営ができるでしょう。
いちご農家、施設野菜農家、主業経営体、全農業経営体で、10aあたりの平均農業所得と農業所得率を比較するとそれぞれ以下のようになります。

平均農業所得(10aあたり)農業所得率
いちご農家189万円52.8%
施設野菜農家120万円47%
主業経営体53万円18%
全農業経営体25万円8%
農林水産省「品目別経営統計」(2007)、「令和4年 農業経営体の経営収支」(2023)をもとに計算

こうしてみると、やはりいちごは農業の中でもかなり利益を上げやすい作物であることがわかります。

ただし、いちご農家の年収は栽培方法により多少異なります。
例えば、いちごの土耕栽培と高設栽培を比較すると、10aあたりでの、所得率等の違いは以下のようになります。

いちごの栽培方法収量
(kg)
所得
(万円)
所得率
(%)
単価
(円)
単位あたり
生産費
(円)
一時間あたり
所得
(円)
労働時間
(時間)
所得
(千円)
促成・土耕栽培5,00031751.212391080200215843171
促成・高設栽培5,50020930.512451122222112512086

10aあたりに収穫できるいちごの量は高設栽培の方が多いですが、より所得を上げやすいのは土耕栽培であると読み取れますね。一般的には、いちごの栽培方法は土耕栽培を選択されている農家さんが多いです。

いちご農家の年間スケジュール!繁忙期はいつ?

農林水産省の農業経営統計から、いちご農家の労働時間は一人あたり1874時間だと考えられます。平均的な年間労働時間である約1600時間と比較すると、いちご農家の仕事は忙しいと言えるでしょう。
これらの年間労働時間を、仮に一日8時間仕事をしたとすると、労働日数はそれぞれ以下のようになります。

年間労働時間一日の労働時間(仮定)労働日数
いちご農家1874時間8時間234.25日
平均1600時間8時間200日

いちご農家は日本の平均年間労働時間と比較すると労働時間は多いですが、一日に8時間働くと仮定すると、お休みの日は年間130日ほどとなります。いちご農家は忙しい仕事ですが、お休みは十分とることができるでしょう。
とはいえ、生き物のお世話をする以上、長期のお休みをとることは難しいのが現状です。特に、収穫や出荷を行う12月~翌5月ごろは繁忙期とされています。
では、いちご農家の一年を栃木県のとある農家さんの例から見ていきましょう。

春~夏のいちご農家

春のいちご農家

春を迎え、4月~6月の時期には親株の定植(ていしょく)と子苗(こなえ)を増やす作業を行っていきます。いちごは野菜のように種から育てるのではなく、苗を増やして栽培するのが一般的。苗を増やす元になる株を「親株」と呼び、親株から伸びる「ランナー(子苗)」を増やしていきます。親株から最初に伸びた「ランナー(子苗)」を1次ランナー、または太郎苗と呼びます。1次ランナーから2次ランナー(次郎苗)、2次ランナーから3次ランナー(三郎苗)…といったように苗が伸び、成長させていきます。おおよそで1つの親株から約50本のランナーがとれるそうです。

夏のいちご農家

そこから7月~9月上旬の夏のシーズンに親株から伸びる子苗を切り離し、ポットと呼ばれる小型のプランターに植え替えて育苗していきます。この時に花となる芽が育つのを促すため、標高の高い冷地で育苗したり、クーラーや地下水を利用した夜冷育苗など寒さを感じさせる技術も使われたりしています。これは上で述べた収穫時期を調整するためなんですね!

秋~冬のいちご農家

秋のいちご農家

9月中旬から10月にかけて、ポットに植えた苗をハウスに定植します。これが皆さんが思い浮かべやすいいちご狩りの光景ですね。そこから1ヶ月程度でハウスを覆うなどの温度調節や、根本をビニールで保護するマルチングを行うなど、順調に生育させるための管理を行っていきます。そして10月下旬ごろに咲いてきた花に向けてミツバチを放飼することで受粉がしやすい環境を整えます。この作業は、実はあのきれいな円錐形にするためにとても重要な作業なんですよ。

秋のいちご農家

冬のいちご農家

そして、開花から1ヶ月程度で実が大きくなり、赤く色づいて収穫の時期を迎えます。そこから日々収穫とそれに伴う調整作業が始まります。
これは翌年5月頃まで続き、並行してまた新しい親株から育てていくという流れです。

これらはあくまで簡単に説明しましたが、その他にもやるべきことは本当にたくさん!
長い期間をかけて農家さんはいちごと向き合って栽培を行っているのです。

いちご農家の苦悩・大変なこと

いちごは病気に弱い!?

いちご農家の大変なこと

いちごは非常に栽培が難しい作物と言われています。それは天候の変化と病気に弱いという点が主な理由です。
日照不足だと苗が弱く育ってしまい、逆に急な高温、強烈な日照はチップバーンと呼ばれる葉先やランナーの先が枯れてしまう症状が発生してしまう恐れがあります。
またいちごの実は土に触れてしまうと病気(うどんこ病)になりやすいため、土に触れないように育てる必要があります。
加えてアブラムシも天敵です。そして夏の暑さに弱く、乾燥に弱く、冬でも水やりが必要、肥料が実につかないよう気を配るなど、気にかけることは山ほどあります。

こうしてみるといちごは天敵だらけ!栽培が難しいと言われるのも頷けますね。

出荷はとっても大変!

天敵はなにも難しい栽培だけではありません。いちごの出荷作業において大きなウエイトを占めるのが手作業でのパック詰め。ピーク時には1日約5000パックの出荷調整作業を行っています。
大きさや重さを一瞬で見極め、バランスよくパックに配置していくことが求められるため、経験も求められます。慣れていないとたくさんの時間がかかってしまったり、せっかくのいちごがつぶれてしまうなんてことも。それ故にたくさん収穫したくてもパックに詰める作業の手が回らないため、収穫適期を逃しいちごの出荷ができないこともあるんだとか。せっかく収穫された美味しいいちごが、食卓に並ぶことができないなんてそんなひどい話はありません!

そのため期間限定のアルバイトを農家さんで募集していたり、各地のJAがパック詰め作業を一部代行しそちらで求人を出していたりなど、シーズン中はいちご農園での短期アルバイトの農業求人が増える傾向にあります。
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まとめ

一年間という長い期間をかけ、農家さんはいちごを管理・調整し、大切に育てています。食べてしまう時は一瞬ですが、そこには非常に多くの手間と工夫が不可欠です。 しかしこれはいちごのみに言えることではありません。多くの作物では収穫・出荷期に人手を必要としています。農業ジョブではこうした農家さんの採用のお手伝いをしております。大変な作業ですが、それと同時に自分の手で作物を収穫することは何にも代えがたい達成感がありますよ!
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よくある質問

いちご農家の年収は600万~900万円です。また、農林水産省の「品目別経営統計」(2007)をもとに計算すると、いちご農家の世帯農業所得率は52.8%と施設野菜の中ではトマトに次いで高く、比較的利益を上げやすい経営ができるでしょう。

収穫や出荷を行う12月~翌5月ごろが繁忙期とされています。この時期は、期間限定のアルバイトを農家さんで募集していたり、各地のJAがパック詰め作業を一部代行しそちらで求人を出していたりなど、求人が増える傾向にあります。

農林水産省のデータをもとに、いちご農家の一人当たりの年間労働時間は1874時間と考えられます。平均的な年間労働時間である1607時間と比較すると、いちご農家のお仕事は忙しいと言えるでしょう。